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テーマ:本日の1冊(3698)
カテゴリ:光文社古典新訳文庫
“車輪の下で” 評価:★★★★☆
--- 梗概 ------------- 地方の小さな田舎町で、神童ともてはやされるほど優秀なハンス。彼は家族、ひいては町中が期待する中、神学校を受験し、好成績で合格する。入学後も学内でトップをとり続け、周囲からも優秀な生徒だと認められるハンス。しかし、彼はしだいに学問への興味を失い、それに従い成績もどんどん下がっていく。そして、いつしかハンスは優等生から劣等生へと成り下がり、ついには退学にまで追い込まれた。学校をやめたハンスは故郷へ戻り、新たな道を歩み始めたのだが・・・。 ---------------------- 生意気な、だが幸せな感情にとらわれ、 自分は本当に、頬のぽっちゃりしたお人よしの同級生たちとは違う、もっと優れた存在なのではないかと考え、 ひょっとしたらずっと高い場所から優越感を持って彼らを見下ろすことが許されるのではないか、という思いに浸った。 (P25より)
高校時代に新潮文庫から出ていた『車輪の下』を買ったのですが、数行読んでポイッとしたままでした。しかし、光文社から出たとあって再挑戦のつもりで読んでみると・・・。 感慨無量です。誰しもが少なからずハンスと同じ思いを、青春時代に持ったことと思います。 私も例に漏れず、ハンスと同じように懊悩しました。 若い頃って世界がすごく狭いんですよね。それゆえに変な全能感を持ったり、驕慢になったりしちゃうんです。そういう若い頃の自分を、大人になってから気づけば「若気の至りだな~恥ずかしいやつ」って軽く笑い飛ばせるんでしょうが。 もし、自分が全能で誰よりも優れていると信じていて、それが唯一自分を支えるものだったとしたら、その自信が瓦解したとき、若者はアイデンティティを失ってしまうのかもしれません。そして、生きる気力が摩耗していく。 よくわかります、こういう気持ち。若いときは何にでもなれると思っていたし、夢は叶うという確信が、根拠もないのにあったりして。凡人は、小さな挫折を繰り返す中で次第に自分がいかに驕っていたか、無謀だったか、そしてそれが若さゆえであったことに気が付いていって、大人になる。“特別”でなく“普通”の大人になることをスムーズに受け入れられる。 でも、ハンスのように小さい頃から周囲に期待され、できることが当たり前だと思われている秀才にとっては、“普通”の大人になることさえ、本人はもとより、周囲も受け入れられないんですよね。そして、その重圧に若者は押しつぶされそうになる。 それを乗り越えられるといいけれど、優秀であれば優秀であるほど、周囲の期待が大きければ大きいほど、その自分像からの脱皮が困難になる。 ハンスも例に漏れず、うまく脱皮できなかった不幸な若者の一人なんだと思います。 自分の青春時代を思い出して、ちょっと胸が苦しくなりました。私も若かったな~と今では思えますが、当時はとっても苦しかったんですよね・・・( ̄~ ̄;) === 23冊目 読了 === お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年03月17日 08時10分04秒
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