『神の棄てた裸体 イスラームの夜を歩く』
帰京する息子を迎えに、羽田空港へ。空港にはやはり独特の空気感が漂っていて、その匂いをかぐと、ふと旅に出ていきたい「旅愁」にかられる。家路の途中、秋葉原で途中下車して、プラモデル売り場をのぞく。ジオラマ用の建物や木や人。へえ、こんなものまで、という驚きに満ちていて楽しい空間。人なんて、2,3mmのサイズで、どうやって彩色しているのだろうか。中国で女工哀史みたいな少女たちが作っているのかな。『神の棄てた裸体 イスラームの夜を歩く』(石井光太・著)読了。先日読んだ『物乞う仏陀』に衝撃を受け、著者に興味を持ったので、別の著作も借りて来た。本作は、イスラム世界の性や売春をテーマにした私ノンフィクション。通訳を介して、こんなに細かい会話がホントに出来たのかな、と思わないでもないが、心の交流からすくい取った心情までセリフにすると、そうなるのだろう。交わされた会話から浮かび出てくる人間像は、彼ら彼女たちが置かれている過酷な境遇から我々が想像するものとは違って、実に人間的で、それだけに痛切なものがある。我々と比較すれば、一体そんな過酷な境遇のどこに幸せなどあるものだろうか、と思ってしまうが、彼らは彼らなりに与えられた状況の中で、やはり幸せがある。たとえ、それがちっぽけで、一瞬のものであっても。 【中古】文庫 神の棄てた裸体-イスラームの夜を歩く-