年収の壁の問題、超複雑。
政府内でも最近話題の「年収の壁」の件。103万、106万、130万、150万円、201万円。こんなにあったら、理解が行き届かないのは当然かもしれません。これをすべて正確に説明しきれる人が、世の中にどれだけいるか。というか、政府やそれを取り巻く公務員の方の中ににどれだけいるか。昔ながらの103万や130万円という数字だけが一人歩きして、一生懸命超えないように頑張っているケースが多いです。103万はいわゆる課税対象の給与額で見ますが、130万円には課税されない通勤手当も含むことの理解は、かなり薄いよう感じます。なのに、一生懸命、通勤手当を除いた金額で130万円を超えないようにしているケースも見られます。また、130万円を「1月~12月の年収」だと思っている人もかなりいますが、そんなことはありません。だって、10月までがっつり正社員で働いてきて1月~10月の年収が500万あった妻が会社を辞めて、失業給付を受けないなら、ご主人の社会保険の扶養に11月から入ることができますが、1月~12月の年収で見たら入れないことになってしまいます。社保の扶養の130万円未満は、「今後その年収を受けられる見込みがあるか」で見ます。その意味で言えば、扶養する側(仮にご主人としましょう)の会社の健保が、その扶養家族(仮にその妻としましょう)のパートの給与明細3ヶ月分を提出するよう、突如依頼することもあります。そこで、108,334円以上の給与(通勤手当含む)を得ている状態が認められれば、「扶養抜いてください」ということがあります。108,334円×12ヶ月が130万円をわずかに上回るからですね。「直近たまたま忙しかっただけ」「来月から減るので、年間で見たら130万は行きません」といっても、「ではまた収入が減ったら扶養申請してください」くらいに言われちゃうこともある。年収は130万円未満なのに、パートの妻が週20時間以上で106万円以上の年収なら、パート先で社会保険に加入することになります(パート先の会社規模にもよります)。130万より、週20時間&106万のほうが優先されるということです。103万のほうについて言えば、多少超えたって、ご主人の税金が増えるのは計算上たいした金額ではないのですが、その辺りの制度理解が浸透していないこともあります。それを知っていたとしても、ご主人の会社でご主人に家族手当などの扶養手当を支給している場合に、その会社が何を基準に「扶養手当の対象となる家族としているか」をしっかり確認しないといけません。昔ながらの103万円を基準に、「103万を超えている妻の分は、扶養手当は出さない」という給与規程になっていたら、税金がどうのこうのなんて関係ないのです。つまり、一人一人が置かれている状況によって、壁の解釈がいかようにも変わってくるのです。130万円未満の国民年金第3号被保険者の扱いについては、これまで何度も取り上げられてはなくなりを繰り返してきました。今回、これだけ年収の壁のことが注目されると、いよいよ本腰を入れて動き出すのではないかという気もします。上記の微妙な取り扱いは、あくまでも一例。これだけ複雑化した状況を、果たして、どういう落としどころで話をつけるか。政府の対応が見ものです。