歴史と現状に正しく学ぶ領土学習を
数日前の新聞に~「尖閣、竹島領土と明記」中高教科書指針を改定~という見出しの記事が第一面に出ていました。文部科学省は先月28日に、改訂の内容を全国の教育委員会に通知したということです。
「改訂を報じた記事」
(記事の左は「中学校学習指導要領解説 社会編」の表紙~記事は2014年1月28日佐賀新聞)
<記事のリード文>
文部科学省は27日、教科書作成や教員による指導の指針となる中学校と高校の学習指導要領を改訂し、尖閣諸島(沖縄県)と竹島(島根県)を『我が国固有の領土』を明記することを決めた。領土問題に対する政府見解も盛り込む。災害時の自衛隊の役割に関する記述も追加し、28日に全国の教育委員会などに通知する。
記事だけでは判りにくいので、改訂の内容を現行の中学校指導要領解説(以下「解説」)と文科省のHPを参考にして一覧にしてみました。
<中学校地理的分野> 中学校学習指導要領(平成20年3月告示)
内容 (2)「日本のさまざまな地域」 ア 日本の地域構成
地球儀や地図を活用し、我が国の国土の位置、世界各地との時差、領域の特色と変化、地域区分などを
取り上げ、日本の地域構成を大観させる。
内容の取り扱い 内容の(2)のアについて
「領域の特色と変化」については、我が国の海洋国家としての特色を取り上げるとともに、北方領土が
我が国の固有の領土であることなど、我が国の領域をめぐる問題にも着目させるようにすること。
上の学習指導要領はこれまでと変わりありません。変わったのは「解説」の中の解説文です。
<改訂前>
北方領土(歯舞諸島、色丹島、国後島、択捉島)については、その位置と範囲を確認させるとともに、
北方領土は我が国の固有の領土であるが、現在ロシア連邦によって不法に占拠されているため、その返還
を求めていることなどについて、的確に扱う必要がある。
また、我が国と韓国の間に竹島をめぐって主張に相違があることなどにも触れ、北方領土と同様に我が
国の領土・領域について理解を深めさせることも必要である。
<改訂後>
北方領土(歯舞諸島、色丹島、国後島、択捉島)や竹島について、それぞれの位置と範囲を確認させる
とともに、我が国の固有の領土であるが、それぞれ現在ロシア連邦と韓国によって不法に占拠されている
ため、北方領土についてはロシア連邦にその返還を求めていること、竹島については韓国に対して累次に
わたって抗議を行っていることなどについて的確に扱い、我が国の領土・領域について理解を深めさせる
ことも必要である。
なお、尖閣諸島については、我が国の固有の領土であり、また現に我が国がこれを有効に支配し
ており、解決すべき領有権問題は存在していないことを、その位置や範囲とともに理解させること
が必要である。
改訂によって変わる点(付け加えられた点)は次の2点です。※上の赤字の部分
・竹島を不法に韓国が占拠していること。竹島は我が国の固有の領土であり抗議を行っていること
・尖閣諸島は我が国の固有の領土で有効に支配していて領有権の問題は存在しないこと
※北方領土については変わっていません。
今回の改訂は、我が国の領土についての歴史的な経過や現在の状況を踏まえたものです。領有権のある自国の領土について正しく学ぶのは国民としてあたりまえのことです。なお、歴史的分野、公民的分野でも同様な趣旨で改訂されていますが、長くなるためにここでは割愛します。
今回の改訂について、記事の中に「領土教育を重視する安倍政権の意向を受けた対応で、中国と韓国の反発は必至だ」とあります。この表現だと、「反発があるから主張しないほうがいい」と言ってるように聞こえます。
大切な領土学習のことが、安倍政権の保守性にからめて語られるのはとても残念なことです。