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カテゴリ:アーカイブスシリーズ
巻頭言 挑戦することの大切き 2003(平成15)年3月 Y中学校文集より 2000年3月にスタートした、NHKの番組「プロジェクトⅩ」が、昨年の十月で100回を超えた。この「プロジュクトⅩ」は、戦後の日本で、新しい製品・技術の開発、巨大プロジュクトのエ事、事件・災害の解決に立ち向かった人々を描いている。この番組を観ていると、今はあたりまえと思っていることが、多くの人々の努力によって成し遂げられたということに、改めて気づかされる。 「潮音表紙 平成14年度(2003年3月)」 (平成14年度は、学校週5日制が始まり「ゆとり教育元年」でもあった」 この100回の内容を調べてみると、新製品の開発に関するものが31回と一番多く、建設工事関係11回、医学関係9回、スポーツ関係と事件・災害関係が各7回となっている。一番多い新製品の開発では、身近な電気釜や洗濯機から自動車、宇宙ロケット、潜水調査船にまで及んでいる。例えば電気釜にスイッチを入れたら自動的にご飯ができるのは、今はみんな当たり前と思っている。しかし、その開発には多くの困難があった。 電機会社から頼まれて開発にあたった町工場の経営者は、どんな条件でもきちんとスイッチが切れるようにするために、炎天下の屋根の上や寒い日の庭先で炊飯実験を繰り返す。そして、その実験に使う大量の米を買うために自宅を抵当にして銀行からお金を借りた。家族は毎日毎日、実験でできる出来損ないのご飯を食べさせられた。そういう苦労の末に完成して製品化された電気釜は、主婦の家事労働を軽減して睡眠時間を1時間増やしたとまで言われた。 (第42回「倒産からの逆転劇ン電気釜」~町工場一家の総力戦) 「電気炊飯器」 (この写真はイメージです) このようにしできた電気釜を、製品化して販売した電機会社は、みんなが知っている大企業であるが、直接開発を担当した町工場の家族のことは誰も知らない。この番組から学ぶことは挑戦することの大切さである。何事も最初に思いつき挑戦するということには困難が待ち受けている。尊いのは、みんなから笑いものになっても、失敗しても挑戦し続ける心である。 私たちの廻りには、すでに電化製品や自動車など生活を便利にする物や技術があふれている。また、環境問題や資源問題の深刻化によって、これまでのような巨大プロジェクトは実現が困難な時代になった。アメリカの宇宙開発も、今年1月のスペースシャトルコロンビアの事故で大きな曲がり角に来ている。そういう意味では、現代は夢が描けない時代だと言ってもいいかもしれない。しかし、挑戦する課題はまだたくさんあるはずである。 例えば、豊かな時代とはいっても、世界中を見渡せば富める国と貧しい国の差は開くばかりである。豊かさを人類全体にどう均等に分配するのかというのは大きな課題である。21世紀の後半に「プロジェクトX」が放送されているとすれば、そのテーマは社会のしくみの改革が大きなテーマになっているはずだ。 今年1月、歌手中島みゆきが歌うこの番組のテーマ曲「地上の星」が、発売から二年半でシングルチャート1位を獲得した。誰もが夜空に輝く星は見ている。昨年ノーベル賞を受賞した田中さんは「地上の星」だったが、受賞によってせ界中に輝く天空の星になつた。しかし、私たちの知らないところで挑戦し続けて一つのことを成し遂げた名もない人々(地上の星)がたくさんいる。この歌は、もっと身近な「地上の星」を探そう、そして讃えようと訴えている。 このY中学校にも、磨けば輝く「地上の星」がたくさんいるのではないかと思う。地上の星になるための第一条件は挑戦する心を失わないこと、第二は失敗を成功につなげようとする不屈の精神。失敗にくじけず、失敗から学ぶことのできる人が「地上の星」となる資格のある人だと思う。 ※19年前のこの文章を読むと、確かに今、巨大なプロジェクトの時代は終わりつつある。先進国における巨大プロジェクトは民間主導のものに変わりつつある。地球環境の保全が重要な課題だが、これから巨大インフラ整備を行おうとする開発途上国からは賛成が得られないというジレンマも抱えている。 「富の公平な分配」、これは自分が常に考えてきたことである。格差の拡大はますます加速している。人類の明るい未来は「平等の実現」をどこまで図ることができるかにかかっているように思う。 ↓ランキングに参加しています。良かったらクリックをお願いします。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2020/06/04 05:10:50 PM
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