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テーマ:日本史(1738)
カテゴリ:日本史・世界史
此の頃都ニハヤル物
現在の教科書にも出てくる「二条河原の落書」。後醍醐天皇の建武の新政の始まったころに、京都の鴨川に立てられた札に書かれていたという。ある官僚が記録した『建武年間記』に収録されている。建武の新政当時の混沌とした世相を風刺していて、その七五調の文体からも落書の名作とされる。落書の作者は不明である。 此頃都ニハヤル物 夜討 強盗 謀(にせ)綸旨 召人 早馬 虚騒動(そらさわぎ) 生頸 還俗 自由出家 俄大名 迷者 安堵 恩賞 虚軍(そらいくさ) 本領ハナルル訴訟人 文書入タル細葛(ほそつづら) 追従(ついしょう)讒人(ざんにん)禅律僧 下克上スル成出者(なりづもの) これまでは、建武の新政の混乱を皮肉ったものとして扱われてきた。しかし、最近ではこのころ勃興していた、連歌・田楽・茶寄合・禅宗・律宗などの動きなど、時代全般の変動を風刺したものと解釈されている。 中世は、なかなかつかみどころがない。時代的には、平安中期・鎌倉・建武の新政・室町時代・戦国時代、安土桃山時代と600年にわたる。これを、今までは大まかに「律令政治の終焉」、「武士の登場」、「下剋上」といったキーワードでとらえていた。 しかし、最近では「経済史」の面を重視するようになった。また、同時に「対外交流史」も無視できない。それと、これは以前から扱ってきていたが「商業や交通の発展、特産物の成長、都市の出現」などによる「民衆の成長」もより重要なテーマとなってきた。 「中世史講義~ちくま新書:2019年1月」 (15のテーマにわたり最前線の研究者が中世の要点をあぶりだしている) 上掲書の編者五味文彦は、「中世は1068年(治承4年)の後三条天皇の即位から、1566年(永禄11年)の織田信長上洛までの約五百年をさす」という。そして、「それ以前を古代、以後を近世とするのが一般的である」と続けている。(「」内は上掲書からの引用) 後三条天皇は藤原氏と縁戚関係が遠かったため、「荘園整理令」を出して藤原氏を牽制し、親政を行ったと高校の日本史で習った。五味文彦は、「摂関に抑えられていた状態から脱した後三条が、親政を行うことから中世は始まったのである」(同上) という。そういえば、上皇として初めて院政を行ったのは、後三条の子である白河天皇だった。 「中世史15の視点」 (上掲書の帯より、テーマごとにコンパクトにまとめてある) 各著者が15ページから25ページ程度で、最新の中世史を語っている。このような研究成果が広く一般に受け入れられることで、中学校、高校の教科書も変わってくる。そのタイムラグは、以前は30年以上あった。 しかし、時代の急激な変化に応じて、最近はほぼ10年おきだった学習指導要領の改訂が、今後はもっと短い周期でなされるようになる。そうなれば、歴史の教科書も最新の研究成果が盛り込まれるようになるだろう。 ↓ランキングに参加しています。よかったらクリックをお願いします。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2020/11/14 01:39:00 PM
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