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テーマ:日本の歴史(1071)
カテゴリ:日本史・世界史
日本は「品格ある国家」を目指すべき
少し日数が空いたが、2月16日、3月1日の本ブログで紹介した「ハーバード日本史教室」(佐藤智恵:中公新書ラクレ~2017年10月)に関する続編である。この本にはハーバード大学で日本史を担当している10人の教授が登場するが、第3回目の今回は、アンドルー・ゴードン教授に著者(佐藤智恵)がインタビューした内容の中から印象的な部分を紹介する。 ゴードン教授の授業「アジアの中の日本、世界の中の日本」では、約3か月間で日本の通史を集中して学ぶという。「集中」の度合いは不明だが、最初の6週間で縄文時代から江戸時代まで、残り7週間で明治時代から現代までを学ぶという。 「第一講義、ゴードン教授」 (彼の「日本の200年ー徳川時代から現代まで」は世界の大学の必読書だという) 彼の日本史の授業の狙いは、一つは「世界には様々な政治、社会、文化のシステムがある」こと、二つ目は「現代の政治、経済システムは、『近代化』の時代に端を発し、近代化の経験を共有しながらともに発展してきた」ということだという。 確かにこの二点に絞れば、3カ月で集中して学ぶことが意味あることに思えてくる。授業の中では使う教材は次のようなものだ。『源氏物語』、『今昔物語』、『方丈記』、『放屁論』、『北越雪譜』など。庶民の生活を描いた作品を課題として読ませるそうだ。「大塩平八郎の檄文」も資料とすることもあるという。 日本の大学の研究室は専門化し分業化している。それからすると、散漫で統一性はないが、日本の歩みや文化の特色を理解する糸口としては興味深い資料選択に思える。ただ『源氏物語』はアメリカの学生にはやはり理解しにくい世界のようだ。 ほかに、第二次世界大戦中の日本の国策映画『チョコレートと兵隊』にヒューマニズムを感じたり、城山三郎の『メイドインジャパン』(1959年)で、高度経済成長を学ばせたりしている。日本の歴史講座では全く扱っていない、埋もれた教材を使っている。この点にゴードン教授の日本史研究に関する造詣の深さを感じる。 ゴードン教授は「日本は品格ある国家をめざすべきだ」と提唱している。それは具体的には、「我が国は特別でも完璧でもなく、わが国にも暗い歴史はあるのだ」と認めた上で、「自国を誇りに思う」ことだと述べている。「尊厳」と「謙虚」は表裏一体のものだという。これには自分もまさに同感である。 そして、「アメリカは品格ある国家でしょうか」という問いには、「今のアメリカは品格ある国家とはいえない。それは品格無きリーダーがトップになってしまったから。トランプ大統領やその周りの人々に「品格」があるとはとても言えません」と、言い切っている。 「なぜ私たちは負の歴史を認められないのか」という問いには、「とても大きな勇気が必要だから」と答える。アメリカが「奴隷制」を長く続けてきた暗い歴史、そして今も続く有色人種に対する差別は克服すべき負の遺産だとする。その上でアメリカも日本も、自国の負の歴史に向き合う勇気を持ってほしいと言う。 このインタビューは2017年4月に行われている。トランプ大統領が第45代合衆国大統領に就任した3か月後である。ゴードン教授がトランプ大統領とその支持者を、「品格」に欠けるとはっきり断言しているのは小気味良い。 このシリーズは今後も続けたい。ハーバードの日本研究の深さや合理性がますます明らかになっていくだろう。 ※この項は、「ハーバード日本史教室」(佐藤智恵:中公新書ラクレ~2017年10月)に依った。著者とハーバードの各教授に大いなる敬意を払いたい。 ↓ランキングに参加しています。良かったらクリックをお願いします。 写真日記ランキング お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2021/03/29 12:01:21 PM
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