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テーマ:日本史(1738)
カテゴリ:日本史・世界史
日米関係史のジョセフ・ナイ教授
2月16日と3月1日の本ブログで紹介した「ハーバード日本史教室」(佐藤智恵:中公新書ラクレ~2017年10月)に関する続編である。この本にはハーバード大学で日本史を担当している10人の教授が登場するが、第4回目の今回は、ジョセフ・ナイ教授に焦点をあてる。 ごく最近(3月29日)、ジョセフ・ナイ教授はNHKの「ニュースウオッチ9」に登場した。番組では、最近の中国の南シナ海における海洋進出に対し、日本はどう対応すべきかとという問題について教授にインタビューしていた。 バイデン政権になって初の米中協議が3月18日と19日にアラスカで行われた。それは人権問題などに関わって予想以上に厳しい対立の場となった。その「アラスカ協議」の直後だっただけに、番組は興味深い内容となった。 「もし中国が覇権を握れば…」 (中国の動向をジョセフ・ナイ氏は懸念している~「NHK NEWS 9」より) 「アラスカ協議」は、人権問題などを中心に厳しいやり取りに終始した。ジョセフ・ナイ氏は「アラスカ協議」で、アメリカは中国に対し「これまでのような行為はもう許さないというシグナルを発した」と語っている。 ナイ氏はこれまで「ソフトパワー」の重要性を提起してきた。「ソフトパワー」とは、「文化、政治的価値観、外交政策などを通じて他国からの共感を得る力」で、アメリカの外交政策を語る上で欠かせないキーワードだという。 しかし、覇権を目指す中国に、「ソフトパワー」だけで対峙できるのか。最近の尖閣諸島近海や南シナ海での活発な行動は、アメリカが、同盟国とより一層連携を深める必要があることを示していると自分は思う。もちろん、ジョセフ・ナイ氏の考えも同じであることが先日の「NHK NEWS 9」を見ていて分かった。 さて、「ハーバード日本史教室」に戻ろう。日米関係の歴史についてジョセフ・ナイ教授は、「好奇心」「敵意」「好意」のサイクルだと述べている。 「ジョセフ・ナイ特別功労教授」 (政府の外交顧問などの経験もあるアメリカを代表する国際政治学者) ※「ハーバード日本史教室」より 1872年以降多くの日本人がハーバード大学に留学した。留学生が増えるにつれて、アメリカ人も日本への好奇心を高めた。セオドア・ルーズベルトが「親日派の大統領」になったのは、多くの日本の友人から影響を受けたからで、彼が仲介した日露戦争後の講和も、日本に有利すぎると当時は言われたという。 「敵意」の時代になったのは、1920年代に「大正デモクラシー」がゆきづまっていくころだという。「大正デモクラシー」は日本に政党政治、普通選挙、社会運動などをもたらしたが、戦争の抑止力としては機能しなかった。 日米関係の「好意」の時代は、太平洋戦争(1941~45年)後からで、すでに75年間になる。その理由としてジョセフ・ナイ氏は次の三点をあげている。第一は軍事戦略上の必要性、第二に日本が太平洋戦争後民主的で友好的で開かれた国になったこと、第三に経済的な相互依存だと言う。 日本は「ソフトパワー」の面では、他国に抜きんでていると自分は思う。しかしジョセフ・ナイ氏は、現在の東アジア情勢を考えると、日本にとって「ソフトパワー」だけでなく「ハードパワー」も必要だという。 ただし、「軍事大国」になって周辺諸国を緊張させてはいけない。核武装などはもちろん必要ない。すでに自衛隊は米軍の優秀なパートナーで、これを維持してゆくことが大切だとジョセフ・ナイ氏は述べている。 最近の中国による、香港やウイグル自治区に対する人権を無視した圧制。ミャンマーの軍部による民主派に対する非道な弾圧。こんなに人命や人権が軽んじられているのに、我々は何もできない。国連安保理事会も大国の拒否権の前に無力である。 世界中で286万人が死亡(4月3日時点)したコロナウィルス感染も相まって、2020年代、世界は歴史に残る暗い時代に入ったと思うのは自分だけだろうか。 ↓ランキングに参加しています。良かったらクリックをお願いします。 写真日記ランキング お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2021/05/16 04:41:52 PM
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