|
テーマ:日本の歴史(1071)
カテゴリ:日本史・世界史
世界史の中で日本史をとらえる
日本史の通史を中学校の教科書レベルで展開中です。上のリンクは 江戸時代のはじめの部分ですが、できたらNO.1からご覧ください。 佐藤智恵は、これまで何回もハーバード大学経営大学院を訪ね、学生や教員が日本史から何を学んでいるのかを取材してきた。2017年4月、10人の教授にインタビューした結果をまとめたものが「ハーバード日本史教室」(佐藤智恵:中公新書ラクレ~2017年10月)である。今回もその中から一部を紹介する。 今回は、日本史の通史担当のデビッド・ハウエル教授を取り上げる。佐藤智恵は、ハウエル教授の日本史についての深くて専門的な知識に圧倒された。そして、授業を一部再現してもらい、「文字よりもビジュアル重視」のパワーポイントを使った資料提示に感心している。 ハウエル教授は「世界史の中で日本をとらえる」ことを重視している。このことは奇しくも、日本の「中学校社会科学習指導要領(2017年告示)」でも重視されている。具体的な点を問われて次のように話している。 「デビッド・ハウエル教授」 ※「ハーバード日本史教室」の内表紙より (以下「ハーバード日本史教室」P57 ~P58より引用) 例えば江戸時代に日本は前近代的な社会だったといわれていますが、他国と比べてみれば、非常に安定していて、平和で、繁栄した社会でした。日本には豊かな文化があり、国内では多くの書物が出版され、国民の識字率は非常に高かったんです。もちろん貧富の格差はありましたし、現代と比べれば当時の生活水準はかなり低かったですが、日本は、同時代のアメリカ、イギリス、フランス、中国といった大国よりも豊かで平和な社会を実現していました。こういった視点で日本史を見ることを学んでほしいのです。 ハウエル教授の認識は、最近の日本史研究の方向性と一致している。日本よりもアメリカの日本史研究が先を行っていたのだ。自分の中学校歴史のYou Tubeも最近の動向を意識している。(※You Tubeへのリンクは本ページの上にあります) 20年ほど前まで、江戸時代は貧しい農民が武士に支配され苦しかったという「貧農史観」が大勢を占めていた。教科書には「鎖国」や「士農工商」の身分制度により日本は世界の流れから取り残されたと書かれていた。これらは戦後の「マルクス史観」の影響を受けている。しかし、現在の教科書からは「士農工商」という言葉は消え、「鎖国」という言葉も消えつつある。 以下、ハウエル教授の日本史の見方についてポイントだけを紹介する。詳細は「ハーバード日本史教室」を参照のこと。この本はアメリカの超一流大学の日本史研究について端的にまとめた好著である。(※購入は下のリンクから) (以下は、「ハーバード日本史教室」の記述を要約して紹介する) ※「村請制度」は領主が村の農民の仕事内容まで介入することはない。そのため農民は副業を自由にできたし、どんな商売でもできた。村に決められた年貢さえ納めていれば、副業の商売に対して年貢がかかることはなかった。 ※幕府が直接領土を統治する仕組みではなかったので他国にない柔軟性があった。江戸時代は厳しい階級社会ではなく、その実情は驚くほど柔軟で、その柔軟性が長く秩序を保つ要因だった。 ※14世紀から15世紀ごろ十三湊(現青森県五所川原市)は東日本の巨大な貿易センターだった。治めていたエミシ出身の安東氏は独自に外交使節をアジア諸国に送っている。室町時代末期に京都から離れて一大商圏が築かれていた。 ※歴史的に見ても日本はガラパゴス化する傾向がある。できる限り「開国」してほしい。日本は表面上開いているように見えるが、実際は閉ざされている。実は現在(2017年、トランプ政権下)、アメリカも同様の問題を抱えている。日本人は明治のリーダーのように、もっとコスモポリタンになってほしい。 ※人には自分を良く見せたいという欲望があるが国家も同じ。でも、他国にいい顔をするだけでは自国の利益は守れない。内向き志向から対立が生まれる。互いを利する関係を結ぶには、人と人が交流して互いに学びあうしかない。 ここのほかに、赤穂浪士討ち入り、国際派だった須坂藩(現長野県須坂市)藩主堀直虎、武士道、倭寇など、ハウエル教授の日本史の知識は広くて深い。我々はアメリカ合衆国の歴史についてどれだけのことを知っているだろう。他国を知ることの大切さを、デビッド・ハウエル教授へのインタビューで再認識した。 ↓ランキングに参加しています。良かったらクリックをお願いします。 写真日記ランキング お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2021/04/10 02:50:54 PM
コメント(0) | コメントを書く
[日本史・世界史] カテゴリの最新記事
|