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テーマ:日本史(1738)
カテゴリ:日本史・世界史
昭和天皇のモラルリーダーシップ ハーバード大学の日本史教室の教授の研究や授業実践を紹介するシリーズも、今回で10回目となった。今回も「ハーバード日本史教室」(佐藤智恵:中公新書ラクレ)からポイントとなる部分を引用しながら紹介する。 今回紹介するサンドラ・サッチャー経営大学院教授は「モラルリーダー」について研究している。「リーダーが人間の生死を左右するような究極の決断をする際、どのような倫理的な基準でどう決断すべきか」ということである。 それを、歴史的な事象を題材に考えさせる授業に取り組んでいる。1980年代後半から現在まで長く続いている講座というから、「モラルリーダー」について学生の関心も高いということだろう。 「サンドラ・サッチャー教授」 (終戦の詔勅が日本の歴史学で教材とされたことがあるだろうか) サッチャー教授は15年以上「トルーマンと原爆」を取り上げている。「トルーマンの決断は人道的に正しかったか」が課題である。教材として「正しい戦争と不正な戦争」(マイケル・ウォルツアー)の中の生戦論をベースにしている。 「正戦論」は三つあるという。 一つ目は「功利主義」。これは本土上陸作戦より原爆投下が戦争を早く終わらせ、犠牲者が少ないという考えだ。二つ目は「戦争は地獄」。戦争の罪は戦争を始めたものが負うべきで、真珠湾攻撃で戦争を始めたのは日本だから、原爆を使ってもアメリカには罪はないという考えだ。三つめは「スライディングスケール」。正義の度合いが高い方がより正しい、という考えだという。 「原爆投下後の広島」 (トルーマンはヒロシマは軍事都市で一般市民は住んでいないと思っていた) この三つによって、トルーマンは原爆投下を正当化した。しかし、上掲書の著者であるマイケル・ウォルツアー教授は、この考えは間違っているという。その一番の根拠は「非戦闘員の保護」。戦争の最重要なルールは「非戦闘員の保護」だから多くの民間人を犠牲にした原爆投下は間違っているというわけだ。 「トルーマン」 (彼は戦後、原爆投下の悪夢にうなされ続け、大きな失敗を犯したと言っている) サッチャー教授の授業では、トルーマンを「支持する」か「支持しない」か、自分の意見を表明させる。多くの学生は、原爆が市民に大きな犠牲をもたらしたことを知っているために、「支持しない」と表明するという。 ただ、支持するという学生も何人かいて、教授は少数派の意見から聞く。その中で中国人の学生のコメントが印象的だったという。彼の口からは、日本軍による中国人に対する残虐な振る舞いが述べられたのは言うまでもない。 サッチャー教授は「トルーマンと原爆」について議論する授業の中で必ず「終戦の詔勅」を取り上げるという。 ※以下引用 昭和天皇は戦争を終結させるという難しい決断をされました。降伏すれば、 自分の地位が危うくなる恐れもありましたし、戦争を推進してきた軍部から 「天皇は我々を裏切った」と強く反発されることも承知していました。しか しながら、「平和な世の中を切り開くために」ポツダム宣言を受諾すること を決断されました。こうした昭和天皇の行動と決断に感銘を受け、「終戦の 詔勅」を授業で紹介することにしたのです。 「ハーバード日本史教室」(佐藤智恵:中公新書ラクレ)より この部分を読み、自分は「終戦の詔勅」について学習している学者や学生がいるだろうかと思った。昭和天皇が「モラルリーダー」として苦悩の末に決断に至る経過について、我々日本人自身がもっと知るべきではないだろうか。 明治以降、日本は中国や東南アジアを蹂躙し多大な迷惑をかけてきた。そのことについては、十分な検証と反省がなされなければならない。ただ、終戦後の日本はマルクス主義歴史学者やその影響を受けた日教組による「自虐史観(一方的に日本だけが悪いとする)」教育が行われた。 その中で、アメリカの非人道的な東京大空襲や原爆投下を批判する声はかき消された。そして東京裁判で日本は一方的に戦争責任を取らされた。勝者による一方的な断罪であった。 アメリカのハーバードでは、学生たちはより多面的・多角的に原爆投下を学んでいる。アメリカ民主主義の素晴らしさはここにある。ただし、落選したトランプが3年後に再び復活するならば、間違いなくアメリカ民主主義の危機が来るだろう。 ↓ランキングに参加しています。良かったらクリックをお願いします。 写真日記ランキング お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2021/06/30 06:23:34 PM
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