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テーマ:日本の歴史(1071)
カテゴリ:日本史・世界史
無邪気な江戸礼賛に一石
30年くらい前までは、江戸時代は「鎖国で世界から取り残された」、「厳しい身分制度」、「農民は常に貧しく搾取の対象だった」、「飢饉や洪水で餓死者も出て、一揆や打ちこわしも頻発した」といった暗いイメージで捉えられていた。 しかし、その後研究が進んで江戸時代の見方が変わっていった。というか、もっと多面的な見方をするようになった。数例を上げれば、「庶民教育が充実した」、「庶民が文化を楽しむ」、「豪農や豪商が資本主義の萌芽をもたらす」、「浮世絵を代表する日本文化が欧米を魅了した」といったものである。 故杉浦日向子が登場したバラエティ「お江戸でござる」は、江戸の庶民の生活を明るく描いた。それは、それまでの江戸時代観を見直すきっかけとなった。 それに対して、今回紹介する本は、江戸時代礼讃論に徹底的に冷や水をかけている。当時の絵や資料をふんだんに用いて実証的に論を進めている。これもまた、一つの真実であろう。 「本当はブラックな江戸時代」 (永井義男:朝日文庫2019/10)。 <目次> 1 江戸はブラック企業だらけ~長い修行時代、少ない休暇 2 安全ではなかった江戸の町~危険な警察業務は庶民が担う、過酷すぎる刑罰 3 食の安心・安全はなかった~江戸の水を飲むと下痢、腐った魚が流通 4 汚くて残酷だった江戸の町~異臭が鼻をついた裏長屋、子どもの虐待が多かった 5 高い識字率のまやかし~識字率世界一は本当か、文武両道はウソ ※一部字句を省略 目次(小見出しは一部を抽出)だけを見ても、これでもかこれでもかという感じである。しかし、400年前~200年前の世の中を現代の基準で見ている部分もある。 裏長屋は異臭が漂っていたというが、ちゃんと共同便所があった。だけど同時代のベルサイユ宮殿にはトイレが無かったのだ。パリの市民は壺(おまる)に排泄して、それを窓から道に投げ出していた。 江戸は「リサイクル社会」だったという説にもこの本は反論している。しかし、外国から品物が入ってこない状況で、150万人(幕末の江戸の人口)の生活が成立していた。それは国内流通網の充実と3Rが成立していたからだと思う。 いずれにしても社会科学において、多面的・多角的な見方はとても大切である。この本からは色々と参考になる提言をいただいた。 ↓ランキングに参加しています。良かったらクリックをお願いします。 写真日記ランキング お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022/01/06 12:17:52 PM
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