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テーマ:日本の歴史(1071)
カテゴリ:日本史・世界史
人物評論~西郷隆盛に関して
本ブログ、3月4日の「人物評論」の項で「徳川斉昭」に対する評価を紹介した。今回以降は数回にわたって「西郷隆盛」に関する談話を取り上げたい。 勝海舟と言えば西郷隆盛とセットで語られることが多い。もちろんそれは1868年3月13日と14日(旧暦)に、二人の間で行われた江戸城無血開城に関する会談が、大きな歴史の転換点として小説や映画などで繰り返し描かれてきたことによる。 「勝・西郷会見の場面」 (小説やドラマでは二人きりの会談とされるが、立ち会った者が数名居た) 「氷川清話」のいろんな項で、勝は西郷に関して語っている。その語りは、西郷が早死にした(1877年西南戦争)ことや回顧談ということもあり、西郷への懐かしさやリスペクトに満ちている。よって、大項目の二「人物評論」の項目以外で西郷について語っている場面も含めて、今回以降数回にわたって見てゆこう。 「人間の相場」 江戸城受渡しの時、官軍の方からは、予想通り西郷が来るというものだから、 おれは安心して寝ていたよ。そうするとみなの者は、この国事多難な際に、勝の 気楽には困るといって、呟いていた様子だったが、なに対手(あいて)が西郷だか ら、無茶な事をする気遣いはないと思って、談判の時にも、おれは欲は言わなか った。ただ、幕臣が飢えるのも気の毒だから、それだけは頼むぞといったばかり だった。それに西郷は、70万石くれると向こうから言ったよ。 一「履歴と体験」より 「恐ろしい人物二人」 おれは、今までに恐ろしいものを二人見た。それは横井小楠と西郷南洲とだ。 横井は、西洋の事も別に沢山は知らず、おれが教えてやったくらいだが、その 思想の高調子な事は、おれなどは、とても梯子を掛けても、及ばぬと思った事が しばしばあったヨ。おれはひそかに思ったのサ。横井は自分に仕事をする人では ないけれど、もし横井の言を用いる人が世の中にあったら、それこそ由々しき大 事だと思ったのサ。 その後、西郷と面会したら、その意見や議論は、むしろおれの方が優るほどだ ッたけれども、いわゆる天下の大事を負担するものは、果たして西郷ではあるま いかと、またひそかに恐れたよ。 そこでおれは幕府の閣老に向って、天下にこの二人があるから、その行方には 注意なされと進言しておいたところが、その後、閣老はおれに、その方(ほう)の 眼鏡も大分間違った、横井は何かの申分で蟄居を申付けられ、また西郷は、漸く 側用人の職であって、家老などという重き身分ではないから、とても何事も出来 まいといった。けれどもおれはなお、横井の思想を、西郷の手で行われたら、も はやそれまでだと心配して居たに、果たして西郷は出てきたワイ。 二「人物評論」より 「勝海舟・西郷隆盛(南洲)会見の地の碑」 (旧薩摩藩邸のあった場所~東京都港区) 横井小楠(1809~1869年)は熊本藩士の儒学者。福井藩の松平春嶽の政治顧問となって、幕府の政治(幕政改革、公武合体策推進)に関わった。維新後に新政府に参与として参画するも、1869年に十津川郷士ら6人に襲われ暗殺された。「開国を進めキリスト教国にしようとしている」という事実無根な理由に基づいた凶行だった。 横井は鎖国体制と幕藩体制に批判的だった。具体的には、身分を超えた討議にもとづく政治、外国との通商や貿易の促進、国内産業の振興による経済発展等を考えていた。そのために、幕府や藩を無くした統一国家の実現が必要と考えた。 「横井小楠像」 (幕末~維新期に多くの才能が開花したが、失われていった人材も多かった) とても開明的である。勝が「恐ろしい」と思ったのもうなづける。幕末から明治維新までを概観すると、幕末の志士や薩長中心の下級武士たちの働きが大きく描かれている。しかし、横井のように斬新な思想をもった人物の存在を知れば、彼らがちょっと小さく見えてくる。 西郷については、基本的には彼の実行力・行動力を「恐ろしい」と感じたように思う。西郷については、次の機会以降さらに続けて紹介してゆく。 ※「氷川清話」の最初の編者吉本襄(のぼる)は、海舟の最晩年の明治30(1897)年から明治31(1898)年に語ったように装っている。 「勝海舟氷川清話」(江藤淳・松浦玲:講談社学術文庫)の前書きの部分で、編者の松浦玲は、当時の新聞や雑誌に載った記事を検証して、実際は1892(明治25)年から1896(明治29)年にかけ語った内容が中心であるとしている。吉本が最晩年としたのは1892年~1896年が日清戦争をはさむ時期で、その時局性を隠すためだという。 ↓ランキングに参加しています。良かったらクリックをお願いします。 写真日記ランキング お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022/03/14 04:14:23 PM
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