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戦争取材の困難さと留意点
さてウクライナ戦争で、多くの国がロシアを批判する理由は次の二点で、このことは論議の余地のない部分であろう。一つは一方的なロシアの侵攻であること、次にロシアが民間人の大量虐殺という戦争犯罪を犯していることの二点である。 しかし、問題はこのはっきりした2点についても、はっきりとロシアを批判しない国がかなりあるということだ。ロシアへの経済制裁に参加しない国もあるし、国連総会の議決にしても棄権に回る国が多かった。特にロシアにエネルギーなどを依存している中進国に多いようだ。 日本の我々はアメリカメディアのニュースを中心に見ている。しかし、ロシア国営テレビを信じている国民もいる。ロシア国内にも民主的な考えの人たちはいても、権威主義国家の常で徹底的に弾圧されている。 「ジャーナリズムの復権」 杉田はこのウクライナ戦争でのメディアの働きを「ジャーナリズムの復権」という言葉で評価している。特にロシアの蛮行を明らかに報道し記録に残したいくつかの報道について述べている。 「マリウポリルポの迫力」 AP通信が、ロシア軍に包囲され徹底的に破壊されたマリウポリに滞在し送って来た二人組のルボ「マリウポリの二十日間」 同じAP 通信のマリウポリの産婦人科病院への攻撃の映像 3月7日付の『ニュー一面トップに掲載された、避難途中にロシア軍の砲撃で死亡した4人の無惨な死体の写真 これらの報道は軍事施設だけを狙っているというロシアの説明を覆し、「戦争犯罪」を立証するものだと杉田は書いている。 「記者の安全の確保」 現場報道の重要性について、杉田は過去にも多くあったと述べている。しかし、ベトナム戦争時代、ミャンマー、イラク、シリアでは多くの日本人記者やフォトグラファーが命を落としたとして、安全確保の重要性を述べている。今回のウクライナ戦争でも、首都キーウに入るときでも、各社の記者は本社と連絡を取って安全確保に努めたという。 『国際報道を問い直す』 (世界各地での出来事を、我々はどのようにして知り、どう判断しているか) 記者の安全の確保 杉田は自らの戦場取材の訓練についても述べている。米国勤務時代に民間軍事会社から、車で移動中に前後をテロリストの車で挟まれた場合の脱出法や、拘束された同僚記者を救助する訓練(突撃隊の人員が不足し記者も参加すると想定した訓練)。また、自動小銃の射撃訓練や化学兵器防護服の装着訓練なども受けたという。 「ハイブリット化する戦争」 ウクライナ戦争はポストモダンの面を持つ戦争だという。典型的な地政学戦争である。ロシアは歴史的に南下政策をとってきたし、その集大成といった面がある。杉田は、この戦争が持つポストモダンな戦争という面から次のように述べている。 「経済制裁は国際決済システムからロシアを排除するという金融制裁で、ロシアからのエネルギー輸入を削減するものでもある。これは物理的に輸出入を止める兵糧攻めといった過去の制裁より新規性を持っている(杉田)」といっても、制裁に加わらない国がある点で、ロシア市民にとって目に見える生活上の困難までは出ていないようだ。 「戦争の主役は正規軍だけではなく、双方の義勇兵、民間ハッカー、アノニマス集団など多彩であり、国家の枠を超えている(杉田)」民間軍事会社の存在が、多くの人に知られた戦争という点で新しい戦争と言えるだろう。 「また、報道の面でも、目の前で繰り広げられるニュースをスマホで撮影し拡散させる市民は、メディアの時前取材より春香に広く早くニュースを入手できる(杉田)」しかし、危険を避けるために記者を送らず投稿動画に頼るだけではメディアの使命を果たしたとは言えない。「メディアは自前で取材したものだけでニュースを作るべきというのは正論である(杉田)」 プーチン大統領に逮捕状 国連を中心とする国際機関は、ロシアの横暴な振る舞いで無力化されている。しかし、今日(2023,3,18)のニュースでは「国際司法裁判所が、プーチン大統領他1名に戦争犯罪容疑で逮捕状を出した」という。ロシア側は何とも思っていないだろうし、実際に逮捕には至らないだろう。しかし国際世論を喚起する意味合いは一定程度あると思う。今後も関連ニュースに注目してゆきたい。 ↓ランキングに参加しています。良かったらクリックをお願いします。 写真日記ランキング お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023/03/18 08:11:26 PM
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