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1950年代から半世紀もの年月ヘリコプターから地上に絵具を炸裂させる絵画など独自のアクション・ペインティング&パフォーマンスを繰り広げてきた嶋本昭三。
齢77を迎えた2005年、初夏およそ100人のアーティストを率いて敢行されたイタリア関連アート・プロジェクトの旅、その記録- ~ヴェネツィアでのフィナーレ~ そして5月10日、最後の土地、ヴネツィアへ。 旅のメンバーも、すでに帰路についた者と、あらたにヴィネツィアから参加するためにやってきた者が入れ替わり、すべてが流動しながらプロジェクトがつづく。 5月末から6月14日まで、市内数か所を拠点に、街中にもゲリラ的にパフォーマンスで登場、「AUフェスティバル」を行うのだ。 まずは、アカデミア橋から路地裏を歩いて数分、閑静な一角に佇む国立ヴィネツィア美術高校(Liceo Artistico Statale)へ。 15歳から19歳ぐらいまで、アーティストを志す高校生たちが通う学校には、アット・ホームでリラックスした雰囲気が漂っている。 建物の中心は、ガラス張りの明るいアトリエやレンガ壁で仕切られた教室に囲まれた広い中庭。 緑豊かなこの庭に面した回廊を利用して、おのおのが間仕切りを立てて、作品を展示していく。 学校の先生やアーティスト、生徒たち、地元に住む様々な人たちも訪れて、お気に入りの作品を見つけると、作者に 「すてきだね」「いくら?私も欲しい」と声をかけ、交渉が行われた。 会期中、最後の3日間は、パフォーマンスも盛んに行われた。 あるときは中庭で、あるときは映画『ベニスに死す』で知られるリド島の浜辺やサンマルコ広場まで遠征して。 おおまかなプランはあるとはいえ、事前にがっちりとお仕着せのスケジュールや内容が決められているわけではない。 その場の空気や状況で、自然と誰かが何かを始めたり、それに触発されて、また別の何かが始まったり。 仲間にも知られずに、路上の観客に向かって行ったり。 嶋本は語る。 「リドの海岸で日本の大風呂敷を広げてパフォーマンスを始めるアーティストもいれば、観客に向かって突如、大きな風船を使って踊りだしてパフォーマンスに引きつける、知的・身体的障害を持つアーティストもいる。 アートの常識を変えるのだ」 また、白塗りに白装束、煙突のような細長い白い筒がトレードマークの「白A」という仙台在住の20代の男性グループは、互いの顔面に白いスプレーを噴き付けて、歌い踊って微笑みながら、次第に息絶え絶え、瀕死の様相を呈してくるパフォーマンスで、とりわけ好評。 お客さんでにぎわうビエンナーレ会場のジャルディーニ公園の中に突発的に出没して、奇妙なポーズを取ったり、寡黙に淡々とジョギングしながら”異世界”を出現させたりもした。 45センチ四方のキャンパス36枚を並べた磯貝文子は、赤の面と面が重ね合わさってできた線を「夕焼け」と表現し、アクリルに光沢のある粉を混ぜた独自の赤を披露し、ひときわ際立っていた。 →次回に続く アンドレア・マルデガン(アート・コーディネーター)=文 「美術手帳」9月号より お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.10.13 00:56:13
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