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SHOZO~ぼくはこうして世界の四大アーティストになった~

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嶋本昭三

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2005.11.25
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カテゴリ:エッセイ
関西女子美術短大の教授をしていたある日、ぼくのところに一人の卒業生が訪ねてきた。
話聞いてみると、卒業を機に東京に出て行きたいという。
ついてはお金がないので6万円貸して欲しいというのだ。


約25年前の話である。
ぼくは、そうかと言ってお金を貸したらしい。
断っておくが、僕にとっては25年前も今も、6万円といえば大金である。

あのときなぜ何の条件もつけず、一言の説教も垂れず、教え子に「はいそうですか」と言ってお金を貸したのだろう。
「お前に何か貸さねばならぬような弱みがあったのだろう」と言う人もいるが、そんなことはない。
彼女は初めて訪ねて来たのである。
美人であったことは確かだが、とにかく何も言わずに貸したのだった。


それから歳月が流れ、ぼくはそのことをすっかり忘れていた。


そんなある日、一冊の本と共に6万円が送られてきた。
本のタイトルは『つめたい彼女のつめたい悩み』(集英社)、著者は冨士本由紀さん。
お金を貸した本人である。
出世払いと言う言葉があるが、なんと彼女は文筆家となって”小説すばる文学賞”を獲得し、時代の寵児になっていたのである。

ぼくは感動してしまった。とてもうれしかった。


すぐに手紙を出し、何回かやりとりを交わすうち、ぼくはすっかり彼女のファンになってしまった。
冷静に考えてみれば、貸したお金が返ってきただけのことである。
なぜこんなにうれしいのだろう。


何かドラマの主人公になったような気持ちだった。
あれこれ考えをめぐらせていると、空想と現実がごっちゃになってきた。
ぼくは思い切って、ドラマの主人公になることを心に決めた。
そうすると、そこからまた夢が広がる。


ぼくは冨士本さんの迷惑もかえりみず、その後も手紙を書き続けた。


しばらくして、東京の目黒区美術館で「ライトアップ1953年」というタイトルの展示会が開催された。
その当時若手アーティストだった作家たちの展覧会である。
そこでぼくの大きな作品も3点陳列されることになった。

そして会期中、作品の前で感激の再開とあいなった。
冨士本さんはあいかわらず美しかったが、20数年の風雪は少女に風格を与えていた。
ぼくは思わず大手を広げて近づき、彼女を抱擁しようとした・・・が、身体をかわされた。


6万円から始まったドラマだが、ぼくは今後もこの続きを夢見ている。









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Last updated  2005.11.26 00:03:53
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