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灰色の空のむこうには…

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2008.10.17
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カテゴリ:「新選組!」

輪違屋糸里 上巻


芹沢ばかりでなく、近藤やそのほかの隊士たちも、
なまじ剣の腕が立ち学問もあるからこそ、生まれ
故郷に身の置き場をなくしたのであろう。努力が
仇になったともいえる。



文久三年八月。「みぶろ」と呼ばれる壬生浪士組は、近藤
勇ら試衛館派と、芹沢鴨の水戸派の対立を深めていた。
土方歳三を慕う島原の芸妓・糸里は、姉のような存在で
ある輪違屋の音羽太夫を芹沢に殺され、浪士たちの内部
抗争に巻き込まれていく。

先日の日記に書きましたように、壬生のほうまで行って
八木邸で芹沢暗殺の顛末をその現場で話してもらったとき
に、逃げ延びた2人のうちの1人がこの物語の主人公で
ある糸里で、前々から浅田次郎氏の作品として興味が
ありながらも、ドラマ版のほうを見て物語としては面白い
ながらも、その時代を生きた人間の心情として考えると
かなり複雑な心境になってしまう後味の悪さを覚えたので
なかなか読む気にはならなかったのですが、せっかく壬生
に行ったこの機会を逃せばもう読むときはないかなと思い、
その勢いのまま小説のほうを手に取っていました。

浅田作品を読むたびに思うのですが、悪役をただの悪役で
終わらせない物語は、すべての登場人物に愛情が注がれて
いるなぁと思う一方で、この幕末という時代の波に流される
ことでしか生きられない男たちの生き様と女の悲劇がこれ
でもかというくらいに語られていた作品だと思います。冒頭
に書きました言葉がそっくりそのまま壬生に集まった人たち
を現していたのではないでしょうか。この作品に登場する
人物たちは、本人が望む望まざるといった心情を超越した
ところで与えられた役割を演じなければならなかったという
観点からの苦悩が滲み出ていた作品という点では、これまで
にない新選組の新しい解釈として面白い作品だったと思い
ます。しかし、この作品に登場する人物たちの人としての
生き方という点から見ると、そう生きざるを得なかったとは
いえ、誰もがみな自分を殺してでしか生きられない哀愁が
そこはかとなく漂っていた物語でした。





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Last updated  2008.10.22 22:27:12
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