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灰色の空のむこうには…

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2008.11.11
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カテゴリ:「新選組!」

輪違屋糸里 下巻


そちたちは、百姓か、それとも武士か。
武士ならば、この絵を踏んでみよ。



芹沢鴨の愛人お梅、平山五郎の恋人吉栄、新選組の
屯所、八木・前川両家の女房たちは、それぞれの立場
から、新選組内部で深まる対立と陰諜を感じ取って
いた。愛する土方のため、芹沢暗殺の企みに乗った
糸里の最後の決意とは?

上巻に引き続き、下巻を読み終えたのですが、読み
終えた感想としてはやはり浅田次郎氏の作品はとても
面白いというものでした。題材が新選組による芹沢鴨
暗殺という、歴史を知っている人間にとっては大きな
転機となった事件だけに結末は誰しも知っていること
なのですが、それにまつわる多種多様な人間関係を
読み解いていくとなかなか感じ入るところも多く、
とても面白かったと思います。まぁ、土方と糸里の
下りのところは、テレビで見たときに感じたように
相変わらず後味悪いものでしたが。

新たな発見として良かったと思えるのが、新選組の
幹部である試衛館派の隊長たちの本当の心境です。
芹沢派は生粋の武士であり、近藤派はあくまで百姓と
いうスタンスがきっちりと描かれていて、百姓が武士
を斬るということがどういうことなのか、僕らはこの
ような時代小説を読んでもその辺りのことはあまり
ピンと来ず無頓着でいましたが、当時の社会通俗に
照らし合わせて語られる面々の苦渋が行間に滲み出て
いたと思います。そして狼藉の限りを尽くした芹沢の
真実と、近藤派が芹沢に対して抱いていた本心、それ
らを巧みに織り交ぜながら、悲劇へとしか進むこと
の出来なかった新選組という集団は、この暗殺事件
こそ後の時代に翻弄される生き方しか出来なかった
男たちを暗示しているように思えました。





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Last updated  2008.11.13 11:36:19
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