<1965年>映画「赤ひげ」
【スタッフ】監督=黒澤 明 製作=田中友幸、菊島隆三 原作=山本周五郎『赤ひげ診療譚』 脚本=井手雅人、小国英雄、菊島隆三、黒澤 明 撮影=中井朝一、斎藤孝雄 美術=村木与四郎 音楽=佐藤 勝 記録=野上照代 照明=森 弘充 監督助手=森谷司郎、松江陽一、出目昌伸、大森健次郎 【キャスト】三船敏郎=新出去定 加山雄三 =保本 登 山崎 努=佐八(車大工) 団 令子=お杉(女中) 桑野みゆき=おなか 香川京子=狂女 江原達怡=津川玄三 二木てるみ=おとよ 根岸明美=おくに(六助の娘) 頭師佳孝=長次 東野英治郎=五平次(大家)土屋嘉男=森半太夫 志村 喬=和泉屋徳兵衛 笠 智衆 =登の父 杉村春子=娼家の女主人 田中絹代=登の母 柳永二郎 =利兵衛 三井弘次=平吉 西村 晃=家老 千葉信男 =松平壱岐 藤原釜足=六助(蒔絵師) 三津田健=天野源伯 藤山陽子 =ちぐさ 内藤洋子=まさえ 七尾伶子=おとく 辻伊万里 =おかち 野村昭子=おふく 菅井きん=長次の母 荒木道子 =娼家の女主人 左 卜全=入所患者 渡辺 篤=入所患者 沢村いき雄=長屋の住人 常田富士男=地廻り【あらすじ】 医員見習として小石川養生所へ住み込んだ『保本登』 出世を夢みて長崎に遊学した しかし その志は、古びて貧乏の匂いがたちこめる小石川養生所で、ついえていくのを不満やるかたない思いで、過していた赤っぽい鬚が荒々しく生えた所長『新出去定』が 精悍で厳しい面持で「お前は今日からここに詰める」といった一言で「登」の運命が決まったのだ人の心を見抜くような「赤ひげ」の目に反撥する「登」はこの養生所の禁をすべて破って、養生所を追い出されることを 頼みとしていた薬草園の中にある座敷牢にいる美しい『狂女』は、「赤ひげ」のみたてで先天性狂的躰質ということであった「登」は、「赤ひげ」のみたてが誤診であることを指摘したが、禁を侵して足しげく通った結果「登」は 逆に狂女から殺されかけ、「赤ひげ」のみたてが正しかったことを知る毎日、貧乏人達と接し、黙々と医術をほどこす「赤ひげ」は、和蘭陀医学を学ばなければ解る筈のない大機里爾という言葉を使って、「登」に目をみはらせた赤ひげ は「病気の原因は社会の貧困と無知から来るもので,これに治療法はない」と何時も言うそんな中「登」は貧しく死んでゆく人々の平凡な顔の中に 人生の不幸を耐えた美しさを見る「登」が「赤ひげ」に共鳴して 初めてお仕着せを着た日「赤ひげ」は「登」を連れて岡場所に来た際 幼い身体で客商売を強いられる『おとよ』を助けた人を信じることを知らない薄幸な「おとよ」が 「登」の最初の患者であった長崎帰りをひけらかし、遊学中に裏切った『ちぐさ』を責めた 自分に嫌悪を感じ「登」は、「おとよ」の看病に必死となっていたやがて「おとよ」は、「登」に対しても他人に対しても あふれる愛情を示し始めたそして ふとした盗みで「おとよ」に救け出された『長次』と「おとよ」の間に、幼い恋心が芽生えた頃、「登」は「ちぐさ」の妹『まさえ』と 結婚の約束を取り交すことになった が ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー「黒澤明」監督が「三船敏郎」と組んで撮った16作品目のラストは 「赤ひげ」それは 最後を締めくくるに充分に過ぎる 重厚で 荘厳とまで言える内容のモノになった「加山雄三」が主人公となって物語が進行するのだが 途中に休憩が入る185分 長編でも凡そ10例のエピソードが 夫々に息詰まるような 重く感動的な話ばかりで 眼が離せない若い女性の下腹部切開手術の衝撃的なシーン 加山雄三扮する「登」 目を回し倒れこむ「狂女」(香川京子)の 憂い顔で訴える 術中にまんまと嵌り 危うく簪で首筋を突き刺され命を落としそうになる「登」 「香川京子」の いった顔が能面のようで恐ろしくも美しい「六助」(藤原釜足)の死に際の壮絶な顔 見届けろと言われた「登」 何かに打たれたようなショックで 人間の(命の)尊厳さに面と向かい合い覚醒 藤原釜足が最高の演技で女郎屋の女将役「杉村春子」から けしかけられた用心棒たち10人程を 赤ひげ(三船敏郎)が 素手でなぎ倒す 合気道? 大抵は手や足を折られて 杉村春子は流石 抜群に巧い他にも 「二木てるみ」「根岸明美」「頭師佳孝」「山崎努」等の 個人技を光らせる監督こうやって17年間にわたり撮られた16作品を 立て続けに観てみると・・・・ 俳優「三船敏郎」の見事な成長振り だけじゃなく「黒澤明」監督を頭に「黒沢組」スタッフ俳優陣・脚本・キャメラ・美術・音楽・照明等など そのチーム力の変遷から充実度が窺え 完璧な映画芸術を極めるトコロまで登りつめていった過程も解り オイラ的には大満足だった「黒沢」あっての「三船」 「三船」あっての「黒沢」 この二人のコンビ無しに 世界の「KUROSAWA」も 世界の「MIFUNE」も なかっただろう終盤には「黒沢監督」は完全に「三船」に乗り移り 三船の演ずる役者の口を通じ 世間に政府に・会社に・更には世界にまで 自らの想いを語り続けた、それらは何時も 貧しい庶民や底辺でもがく人々 また病人など 弱者の立場にいて撮った ヒューマニズム溢れるものばかりだったそこには 多くの約束事が有り その一つに 「志村喬」の存在 16作品中15作品で「三船」と共演 常に「三船」の対極に置き 「三船」を より光らせた この「赤ひげ」で「三船敏郎」は 最初の「酔いどれ天使」での酔いどれ医者「志村喬」に成り代わった それも酒などいっさいやらない 生真面目一本 貧しい患者のために全精力を捧げる 天使(神)の様な医者に・・・・あのヤクザの若造が 神の様な医者に「東野英治郎」「左卜全」「渡辺篤」「千秋実」「三井弘次」「土屋嘉男」「谷晃」「堺左千夫」「高堂正典」「上田吉二郎」「千石規子」「三好栄子」いたいた何時もいた「若大将」と軽くあしらっていた「加山雄三」の後ろ姿を ファースト・シーンから映しラストも「加山雄三」の後ろ姿に「終」の文字、それは「三船敏郎」との終わりを意味したオイラ的には「影武者」も「乱」も 「三船敏郎」で観たかったが本音だけど・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・今年は毎晩一つづつ4個しか咲かなかった「夜の女王」