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2006年07月09日
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カテゴリ:政治
 ギャオで、『フランク・キャプラ 第2次世界大戦 戦争の序曲Vol.6』を観た。 

 DVDは4000円弱ほどで市販されているようだが、楽天とかアマゾンで扱っていない。
 特にこのVol.6に関しては、ショップによってはなぜか「発売中止」になっているところもある。
 7/10(月)正午までの期間限定で、ギャオのドキュメンタリーチャンネルで観られる。(CM込で1時間5分58秒)
 安全保障問題に関心が高まっている今、日本人すべてに観てほしいと思った。

 北朝鮮のミサイル発射で安全保障上の関心が高いせいか、現在、ドキュメンタリー部門の視聴ランキング1位である。
 好視聴率の割には、レビューでくだらないプロパガンダと言い切ったり、「笑った」という人がいたり、評価は低いようである。
 確かに見終わったあとの後味は悪い。
 決して清清しいとは言えない。
 何かレビューを書こうとすると、そういうことになってしまうかもしれない。
 
 ただ、アメリカ建国の理念には大いに共感できたし、タイトルにあった「なぜアメリカは戦うのか」(直訳)ということについても明確でわかりやすかった。
 プロパガンダの是非はともかく、プロパガンダとしてはよくできているのではないか。
 42年度アカデミー賞最優秀記録映画賞受賞ということで、記録映画として優れていたことは間違いないだろう。
 フランク キャプラは、3度アカデミー監督賞を受賞しているイタリア出身の映画監督である。
 例えば、日本で、とても重要な政府の広報映像を作ろうとした場合、実績のある映画監督を起用するという発想は未だにないだろう。
 たっぷり予算を確保した上で、安くあげるために無名の監督を起用し、浮いた金を天下り先になるような機関に分配するといったところではないか。 

 日本人が見て後味が悪いのは、日本がナチス・ドイツと共に悪の枢軸として扱われていたからだろう。
 愛国心が強い人ほど深く傷付くかもしれない。
 そうでない人にとっても、当時のアメリカ人がこのフィルムによって洗脳?されていたとしたら、日本人に対するアメリカ人の本音ということになり、ショックは大きいはずだ。
 そういったアメリカ人の認識は、世代を経ても多少は受け継がれていると思った方がいいかもしれない。
 そのあたりはアジアでも欧米でも同じだろう。

 そういえば、このフィルムの中で、「理念がなければ国があっても意味が無い。また、国がなければ理念を実行することもできない」という主旨のナレーションがあった。
 つまり、アメリカという国は、元々こういうバランス感覚があった国で、理念自体は極端なナショナリズムを否定しているのだ。
 このフィルムの中でも、国民が第二次世界大戦への参戦を決意するまでは、中立を保っていたことがうかがわれる。
 おもしろいのは、国民の意識が世界の状況の変化によって変わっていった過程であり、民主的な方法で中立を保ち、民主的な方法で参戦を決めたことである。
 真珠湾の奇襲攻撃は日米の戦争のきっかけとして大きく取り上げられがちだが、アメリカ人に対する誤解を招くと思う。
 当時のアメリカ国民の意識を戦争に駆り立てたモチベーションは、日本が中国に侵攻した点にあったのだ。
 アメリカ国民は、それを欧州でのナチス・ドイツの侵攻とダブらせていた。
 このフィルムでは、ナチス・ドイツと同一視した理由の一つに「宣戦布告なしに侵攻した」ということをあげている。
 一方、日本の言い分は、アジアを植民地化から開放するという大義名分があったわけだ。
 しかし、アメリカは日本を含めたドイツ、イタリアとの三国同盟による領土の拡大をシミュレーションし、その結果自国の自由が損なわれると分析していた。
 結局、アメリカのモチベーションは、世界の平和というよりも、あくまで自国の安全、自由の確保がなりより大事なのである。
 それは、こうして自らはっきり表明しているわけであり、疑う余地はない。
 このことに関して、無用な憶測は避けたい。
 アメリカを「世界の警察」と位置づけるのは、的外れである。
 戦争は、正義と正義の争いで、勝った方が正義で負けた方が悪、つまり「勝てば官軍」とよく言われるが、このころのアメリカに関しては正義を振りかざている様子は感じられない。
 アメリカは、ありとあらゆる大義名分を欺瞞とする国なのだ。
 「自国の権利を捨ててまで、他国の平和を守ろうとすることなんてあり得ない」というわけだ。
 この考え方は、ある意味正しいと思う。
 例えば、詐欺師が仕事をするときには、必ず相手に有利な話を持ちかける。
 相手の欲につけ込むわけである。
 詐欺師につけいる隙を与えないという点においては、非常に優れた考え方だと思う。

 確かに、そもそも武力によって平和を成すというのは、大きな欺瞞かもしれない。
 アメリカは決して「世界の平和のため」とは言わず、「自由のために、自らの権利を守るために戦う」と言う。

 武力によって得られるのは、平和ではなく権利(利権)。
 平和は、武力以外の方法でしか成し得ない。
 この2点はアメリカと良い関係を保つために、最低限必要な共通認識かもしれない。
 
 戦後の日本は、二度と侵略戦争を行わないことを憲法で定めた。

 その崇高な理念を実行してきたことは誇りに思っていいはずだが、そう考える人が少ないのはなぜだろう。

 やはりお仕着せの理念だったからか。

 日本が戦前から一貫して持ち続けている理念「アジアの平和のため」という考え方は、決して間違いではないと思う。
 それを武力による侵攻の大義名分にしてしまったことが、結果的に外交上の日米間の誤解や不信感を生んだ。
 
 アジアの平和のためなら、鉄腕アトムのように命を投げ出してもいいのではないか。
 日本人に勇敢な血が流れていることは、貴重な歴史が証明した事実なのだ。

 『鉄腕アトム』のストーリー、最後の部分を見たことがない人のために、念のために書いておくが、戦争ばかりが命を投げ出す場ではないということである。
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Last updated  2006年07月09日 19時49分01秒
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