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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2019.04.24
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​​​​​フィリップ・クローデル「リンさんの小さな子」(みすず書房) ​​​​​​​​​ フィリップ・クローデルという人のことをぼくは知りませんでした。そのクローデル「リンさんの小さな子」(みすず書房)という作品は、たしか​​保坂和志「試行錯誤に漂う」(みすず書房)​​というエッセイ集の中で、同じクローデル​「ブロデックの報告書」(みすず書房)​いう作品が紹介されていて、読みもしていないのに、この作家の作品を立て続けに買いこみました。その中にあったのがこの作品でした。ぼくは時々そういう本の買い方をするのですが、紹介している人を信用しているか、尊敬している場合に、そういうことが起こります。今回は信用している場合ですね。​​​​​​​​​​
​ 結果的にズバリ的中でした。この作品は​2016年​から​2017年​にかけてぼくが読んだ小説の中でベスト1といっていいと思います。​
​​​ 「リンさん」はその名の響きから類推すると東南アジアのどこかの国の貧しい農民であるらしいのですが、戦争の中で息子夫婦を失い、戦場となった故国を逃れ、たった一人残された孫、生まれたばかりの小さな女の子を連れてフランスに逃れてきた難民のようです。長い船旅のすえ、ようやくたどり着いたフランスの港町の難民収容所に暮らし始めたところから物語は始まります。​​​
​​​​​​ 殺伐とした収容所を抜け出し、連れてきた小さな女の子を抱きかかえて街を歩き回る日々の中で、アジアの老人リンさんフランス人の老人と知り合いになります。
 フランスの老人は妻に先立たれたさみしい老後を暮らす身の上であるらしく、海の見える公園まで散歩してベンチに座り込みパイプ煙草をふかしながらボンヤリ思い出の時間を過ごすのが、毎日の日課です。そんなある日、彼はひとりの東洋人の老人と知り合いになるというわけですね。
 妻も友達も失った人生の黄昏を生きるフランスの港町の老人と、働いてきた土地も家族も失い、望んだわけでもないのに異国の地に連れてこられたアジアの老人の出会いとお付き合いから、ほんのりとした友情が芽生えてゆきます。​​​​​​

​​​​​​ フランスの老人アジアのどこかの国から来た老人リンさんの言葉を理解できないし、リンさんリンさんフランス語が、まったく理解できません。二人は​「こんにちは」​というそれぞれ国の挨拶の言葉を互いの名前だと取り違えて呼びかけあっています。
 実に頓珍漢な会話を交わしながら、互いの寂しさが感応しあい、読者には哀しさの響きが場面が変わるごとに木霊してくるように友達になってゆくのです。​​​​​​

​ 小説は二人の老人の、奇妙といえば奇妙な友情を、淡々と描いてゆきます。友情というのは、本当はこういうものだと沁みってきます。60歳を越えた読者であるぼくは久しぶりに友達や友情について考えながらページを繰ってゆきます。
 で、それが

「生きる」ということが「いいことだ」

​ という考え方を支える大切な何かであったことに気づいてゆくのでした。​

​「リンさんは、戦場の故郷で死ななくてよかった。死んでしまいたかったリンさんを支えたのが、残された小さな子の命を守るという文字どおり必死の思いであったのだが、生きていてよかった。」​

 そんな気持ちが、自然と湧いてくる二人の関係は実に自然なのです。​
​​​​ フランスの老人​リンさん​小さな子のために可愛らしいドレスをプレゼントし、かつて、誕生日には妻とやってくることにしていたレストランでの食事に招待します。​リンさん​小さな子にフランスの子供服を着せ、初めて食べるフランス料理やワインがおいしいのか、まずいのかわからない不思議な喜びを味わうのですが、フランスの老人にはそんな​​​リンさん​​​の様子が面白くてしようがない光景です。​​​​
​​ しかし、小説はここでは終わりませんでした。やがて、リンさんは、最初に収容された場所から、新しい収容施設への移動を命じられます。同じ町の中にあるらしい、美しく清潔な建物へ自動車で運ばれたリンさんは、そこがどういう場所であるのか、なぜそこに運び込まれたのか、そこにいる人々は何をする人なのか全くわかりません。​​
​ 読者にも、もちろん、よくわかりません。わかるのは、監視付ではありますが善意の施設であるということだけなのです。​リンさん​が何故ここへ移送されるか、その理由がよくわかりません。
 なんとなく隠されている秘密があります。小説のどこかにあるに違いない謎がほのめかされています。そんな感じが、読みながら漂ってくるのです。しかし、何が謎であるのかは読み取ることができません。​

​​​​​ その美しい白亜の建物には門番がいてリンさんは繰り返し外出しようと試みるのですが、行動は監視され、外出は禁じられています。リンさん友達と会うことができません。意を決したリンさんは、その建物からの脱走を試みます。まんまと施設からは逃げだすことに成功したものの、友達がいつもいるはずの港の見える公園がどこにあるのかわかりません。​​​​​
​  しかし、ひたすら街をさまよい続けた​リンさん​は、ついに、あの友達の姿を見つけるのでした。​
​ 友達を見つけた喜びに思わず車道に駆け出した​リンさん​を、無情にも一台の自動車が跳ね飛ばしてしまいます。瀕死の​リンさん​と投げ出された​小さな子​​フランスの老人​の目に映ります。​
​ 小説はそこで終わります。そこで初めて読者は、二人の老人の悲しみの、本当の深さを知ることになるのでした。作品の哀しみの深さは​リンさん​​「無残な死」​にではなく​「小さな子供との生」​のほうにあったことに気づくのです。
 謎は作品の最初から隠されていた?いや、​リンさん​の真実の悲惨は、読者のぼくには、あからさまに見えすぎていて気付かなかっただけのことだったのです。謎は​リンさん​と一緒にずっと見えていたのです。ぼくは驚くべき結末に絶句して座り込んでしまいました。​

 知られていない作品ですが、​​

​​傑作!​​

​ ​だと思いました。どうぞ、読んでみてください。(S)​​

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最終更新日  2024.05.07 21:12:57
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