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エランベルジェ原作・中井久夫文・絵「いろいろずきん」(みすず書房)
精神科のお医者んの中井久夫さんが、フランスのお医者さんのエランベルジェさんの童話に、自分で挿絵を描いた絵本があります。「いろいろずきん」(みすず書房)という題です。絵本の最初のページで、原作者のエランベルジェさんがこの童話を書いた動機をこんなふうに話しています。 かわいいまごたちへ この絵本には「黄色」・「白」・「バラ色」・「青」・「緑」のずきん、帽子ですね、を着た少年や少女が登場します。その子供たちが、いろんな夢を見たり冒険したりする五つの物語が入っています。 ちょっと「青ずきん」の冒険のシーンを紹介しますね。 青ずきんは、ボートをじぶんで動かしてみたくなりました。杭から綱をほどいて、海にうかべました。オールを動かし見ますと、ちゃんとボートは動きます。「わたしだって、できる」と青ずきんは、ボートをこいで、岸からはなれてゆきました。 さあ、「青ずきん」にはここから、どんな冒険が待っているのでしょう。それは、この絵本を手に取って確かめてください。 絵本の最後には、翻訳して絵を描いた中井久夫さんの丁寧な解説がついています。「五人のずきんたち」について、精神科のお医者さんらしい優しく丁寧な解説です。ぼくはその最後に中井さんがこう書いているの惹かれました。 どのずきんも、話の終わりには「いい子」になったようにみえますが、精神的には一まわり大きくなり、自立し、成長しています。 人と人との関係には「向こう側」と「こっち側」があるということを穏やかに語っている、このニュアンスがぼくは好きなんです。ちなみに、文中のアリエスというのは、「子供の誕生」(みすず書房)を書いた歴史家フィリップ・アリエスのことですが、いづれまた「案内」したいと思っている人ですね。 最後に原作者エランベルジェについては、中井久夫さんのこの解説をお読みください。 原作者アンリ・フレデリック・エランベルジェ(1905-1993)は精神医学者で精神医学史家です。南アフリカのザンベジ川上流に、スイス系フランス人宣教師の子供として生まれ、豊かな自然の動植物と共に幼年時代を過ごしました。九歳の時、突然、ヨーロッパに送られて教育を受けますが、第一次世界大戦によって親との連絡が立ち切れたまま、中学を終え、教養課程で歴史を学んでから、パリ大学医学部を出て精神科医となります。ロシアから亡命してきた夫人と結婚したエランベルジェは生活のため西フランスの小さな町で開業し、その土地の風俗や迷信がアフリカと変わらないのに気づきます。そういう経験が、全部、この童話の栄養になっているでしょう。 余談ですが、我が家のこの本はチッチキ夫人の宝物です。あだやおろそかに扱うことは許されません。表紙の裏には著者直筆のメッセージとサインがあるのですから。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.01.19 21:31:43
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