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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2020.06.28
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100days100bookcovers no7

ポール・オースター「幽霊たち」(訳:柴田元幸 新潮社)
 
1日、空いた。
​ 前回のSODEOKAさん​​「八百万の死にざま」​の記事を読んで、次は「ニューヨーク」しかないなと思い、最初に思う浮かんだのが、これ。
​ ポール・オースター「幽霊たち」(訳:柴田元幸 新潮社)​​

 いわゆる​「ニューヨーク三部作」​の二作め。一作めが​『ガラスの街』​、三作めは​『鍵のかかった部屋』​
 個人的には、このニ作めが一番記憶に残っている。
 例によって展開はほとんど覚えていないのだが、鮮烈な書き出しのイメージは強い。

​ まずはじめにブルーがいる。次にホワイトがいて、それからブラックがいて、そもそものはじまりの前にはブラウンがいる。
 ブラウンがブルーに仕事を教え、こつを伝授し、ブラウンが年老いたとき、ブルーがあとを継いだのだ。物語はそのようにして
​はじまる。舞台はニューヨーク、時代は現代、この二点は最後まで変わらない。
 ​ちょっと芝居の脚本めいたところがあるのには理由がある。柴田元幸「訳者あとがき」によれば、この作品、作家が以前に書いた戯曲を下敷きにしているそうだ。ちなみにこの「訳者あとがき」、非常にわかりやすくこの小説の個性を伝えている。
 設定を紹介しておくと、ブルーは、ホワイトから、向かいのアパートの一室にいるブラックを見張り、報告書をホワイトに送るという仕事の依頼を受ける。
 
ブルーは仕事をブラウンの下で学んだ。
 
難しくない仕事に思えた。たぶん浮気調査だろうとブルーは思う。しかし‥‥。 
 「物語」がどう展開するのか、あるいは、しないのかを確認するために、ネット上で「あらすじ」の記事を探し、それを基に終盤を中心に読み直してみた。すっかり忘れていた。こんな話だったんだと驚く。思っていたよりずっとおもしろい。
 本筋に直接関わらない(はずの)、エピソード的な挿話も読ませる。
 冒頭から予想される「ハードボイルド」なムードは、読み進むにつれ初めは徐々に、後には加速度的に裏切られていく。
 センテンスは短く具体的。しかしそこから、少しずつ、不穏で不気味な影が覗くようになる。
 存在の足元を掬われるような不条理の感覚、アイデンティティと他者の関わり方、といった要素は極めて同時代的。
 そしてなんとこの小説の最後のページに「中国」という言葉が2度。それも『中国行きのスロウ・ボート』と同じ意味で。おもしろい。
 では、SIMAKUMAさん、次回、お願いします。(2020・05・18 T・KOBAYASI)

追記2024・01・18
  ​100days100bookcoversChallengeの投稿記事を ​​​100days 100bookcovers Challenge備忘録 ​(1日目~10日目)​​ (11日目~20日目) ​​​(21日目~30日目)​という形でまとめ始めました。日付にリンク先を貼りましたのでクリックしていただくと備忘録が開きます。​​​​​


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最終更新日  2024.01.18 19:54:00
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