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「100days100bookcovers no16」
ルイージ・マレルバ 「スーパーでかぶた」(松籟社) イタリアの、ほとんど無名の作家の童話集です。1985年に出版されたこの本は、今では図書館でも見つけることは難しいかもしれません。 我が家の童話の棚の隅にあった本を取り出して読み返しながら、最近の出来事を思い出して笑ってしまったお話がありました、少し長いですが、ここに載せてみますね。 「よごれた空」 まあ、さほど面白いとも言えないお話しだったかもしれません。こんな風なショート。ショートが30話ほど入っています。 作者のルイージ・マレルバという人は、映画の世界の人だったようです。ビットリオ・デ・シーカの脚本を書いていたチェーザレ・ザヴァッティーニなんかと仲が良かったらしいのですが、自分でも映画を撮っていた人です。童話や小説も書いています。日本では、当時も、今も、さほど知られていません。 そのマレルバという作家を探し出してきたのは翻訳者である「福井あおい」という女性です。 彼女はエルマンノ・オルミ監督の「木靴の樹」をこよなく愛し、デ・シーカからフェリーニに至る、イタリアの「ネオ・リアリズモ」に強い関心を抱く若き研究者でしたが、「マレルバ童話集1」という、たった一冊の本を残してこの世を去りました。35年前のことです。 版元の松籟社はイタリア文学の老舗ともいうべき出版社ですが、その後「マレルバ童話集2」が出版されることはありませんでした。 彼女は神戸の丘の上の学校の読書室で、文学や映画のおしゃべりに夢中だったぼくたちの仲間の一人でした。 みんながおしゃべりをしたり、お弁当を開いたりしていた部屋がありました。その部屋とは本棚で区切られた向うの小部屋で「経哲草稿」や「ドイツイデオロギー」なんていう、国文学とは畑違いの本と格闘しながら、「パヴェーゼがいいよ。」と、のちにERIKOさんの配偶者になったIRRIGATEくんが言ったことばや、「ポリーニの新しいベート―ヴェンのLP聞いた?ハンマー・クラヴィア。ステキなのよ。足は短いけど。」なんてことしゃべっていたあおいちゃんのことばが、ぼくの「イタリア文学」入門でした。 もう40年も昔のことなのですが、そういえば、78歳になったポリーニはまだ現役でピアノを弾いているようです。 ERIKOさんから須賀敦子の「ミラノ 霧の風景」を差しだされて、すぐに思い浮かんだのがこの本でした。どこか、きっぱりとした須賀敦子の文章の爽やかさにはとても惹かれました。夢中になって読んだ記憶があります。しかし、いつも夢の途中で去った福井さんが一乗寺下がり松町の交差点で、買い物袋を下げ、12個入りの卵のパックを抱えて立っている姿を、ふと思い浮かべてしまう読書でもあったように思います。 思い出を語ってしまいました。これもありかなって、お許しください。 それでは。YAMAMOTOさん、初登場ですよ。ちょっと引き継ぎにくい展開かもで、申し訳ありませんね。よろしくお願いします。(2020・06・05 SIMAKUMA) 追記2023・02・01 つい先日のことです。1月30日の月曜日、人と会う用があって京都まで行きました。JR京都駅の階上、11階だかのレストランで出会いの用を済ませて、フト、思いついて四条河原町まで歩きました。町屋の間の路地のような道をウロウロ北に向かって歩きながら、40数年前に、上で紹介した「福井あおい」さんと四条大橋のたもとにあった音楽喫茶で会ったことを思い出しました。 どんなことを話したのか、それからどうしたのか、全く覚えてはいないのですが、確かに会ったことは事実です。 そんな記憶に促されて、四条大橋の西のたもとまで歩きましたが、件の音楽喫茶は見つけられませんでした。40年たって、記憶の引き金のようなものだけが頭の中にあることが不思議ですが、二十代の半ばで不慮の事故死を遂げた彼女の顔立ちさえ思い出せないまま、ボンヤリ立ち尽くしました。 「行く川の流れはたえずして…」といった人がいましたが、彼が見たのも、この川だったのでしょうか。 追記2024・01・20 にほんブログ村 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.01.25 20:31:14
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