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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2020.09.24
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100days100bookcovers no25 (25日目)
『ドラゴン・パール』シリン・パタノタイ著 田村志津枝訳 講談社 
​​​​​​​​ KOBAYASI​さん『ダックスフントのワープ』の紹介は愉快でしたね。ユーチューブの町田町蔵を検索したり、彼のバンド「INU」の曲を聞きながら書いています。「ダックスフント」「ダックスフンド」の蘊蓄も英語とドイツ語の違いって知らなかったです。ひょっとして小説のしかけと関係があるのかしらと思いつつも、すぐには本が入手できないので確かめようがなく、KOBAYASIさんの紹介文だけを頼りに次の本を物色しようと思います。​​​​​​​
​​​​​ その前に、ちょっと寄り道です。『ダックスフントのワープ』の登場人物設定は​開高健​の​『裸の王様』​にかなりよく似ていますよ。​​​
​​​​​ 調べたら、1958に発表していて、芥川賞をとった作品ですので、思い出す方もいると思いますが。「僕」はしがない画塾でこどもに絵を教えていますが、小学4年生​(?)の太郎の絵画教育を友人から頼まれます。太郎は学校でも家でも委縮しきっているので、絵を描きながら心をのびのびさせてやってくれと頼まれて、週に一度面倒を見るようになります。​​​​
​​​ 初めのうちは、絵を描けない太郎の心をほぐすために、「僕」は即興の話をしたり、こわばった体と触れ合ったり、泥遊びをしたりします。次第に太郎の心もほぐれるようになります。​​​
​​​​​​​​ 太郎の父は絵の具メーカーの社長。太郎実母とは死別して、現在はまだ20代に見える若い母がいます。さらに、に太郎の指導を依頼してきた友人というのは、太郎の担任教師で、絵を描いていて絵画出展の際には太郎の父から援助を受けています。太郎の義母「虚無」を抱えた表情を浮かべることがあります。ストーリーは割愛しますが、似すぎでしょ?手元に本はないのですが、偶然2か月ほど前、読んだところで、ちょっとびっくりしました。まあ、寄り道はこのあたりで切り上げます。​​​​​​​​
​ 作品選びですが、犬→犬→猫→猫→犬ときたので、そろそろ犬から離れる頃かな。それなら、テーマは「ワープ」。瞬間移動、テレポーテーションのこととして、ジャンルはSFといきたいです。SFは、アニメや映画などのヴィジュアル的には嫌いではありません。​
​​ 『宇宙戦艦ヤマト』『ターミネーター』『マトリックス』『インターステラー』『ブレードランナー』『トータルリコール』みんなワープしていると思いますが、全部原作読んでいません。『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』も読みかけのまま。文字情報だけでSFを想像するのはとても難しいです、私には。​​
​ というわけで、いっそ、フィクションからノンフィクションにワープします。
 ​
紹介するのは『ドラゴン・パール』シリン・パタノタイ著 田村志津枝訳 講談社​
 ​『星の王子さま』​​『不思議の国のアリス』​のように、8歳タイの少女が激動の中国(異世界)に送られ、14年間過ごした思い出の記録です。偶然ですが、犬から龍(ドラゴン)に繋げることもできますね!(^^)!

​​​​ 最初にこう記されています。

 ​古くから伝わる中国の神話では、龍(ドラゴン)は中国の皇帝あるいは皇帝の治める中国を意味していて、手厚い守護と細心の警戒の象徴であった。この龍(ドラゴン)は、雲のあいだを泳ぎまわりながら真珠(パール)をほうり投げて遊ぶのを、ことのほか好んだという。​

​​​​​​ 1956、著者​シリン・パタノタイ​8歳と、その​兄ワーンワイ・パタノタイ​12歳は中国政府との親密な関係を築くため、父親によって、タイのバンコクから北京に送られる。当時のタイの​ピブン首相​はしたたかな政治家だった。​​​
​​​​​ 第二次大戦中ピブン首相は表向き「親日」の態度をとりながら、連合軍側とも連絡をとりつつ裏では抗日運動も支援していた。小国タイは常に巧妙な外交によって独立を維持してきた。1949年、中華人民共和国が成立すると、多くの華僑を抱える東南アジア諸国にも動揺が起きる。首相は反共政策を前面に押し出してアメリカの援助を引き出す一方で、中国との関係改善も模索する。​
 首相の腹心のジャーナリスト、​サン・パタノタイ(著者の父)​は中国との交渉を担うが、アメリカが締め付けを強化してきたため、進展の見通しが立たなくなってしまう。この難局を打開するために、​サン​は、タイと中国との生きた架け橋にするため、自分の二人の子どもを​周恩来​に預ける決心をする。というのが、この本が書かれる前段です。​​
​​
 つまり戦国時代の人質ですね。初めて読んだのは今から14年前でした。そのころは、(有力者の子どもを人質として預けるなんて前近代的なことが今でもあるなんて、信じられない。)と思いましたが、2020年の今は、(今でもあるだろうな。)と思います。(世界は冷戦時代より厳しくなっている)と思っています。
​​​​ 二人とも、小さなときから、政治家の世界の中で育ってきているので、多少の不満や寂しさはあるけれど、誇りと使命感を強く持ち、言葉も習慣も違い、驚くくらい貧しい生活にもなんとか慣れていきます。
​​ 廖 承志(リャオ・チョンヂー、りょう しょうし)周 恩来(チョウ エンライ、しゅう おんらい)らが、秘密裏に二人の親、保護者となって、できる限り温かく見守ってくれる。故国タイでは、父は暗殺未遂に遭ったり、逮捕されていたり。​​
​​ ところで、西園寺公一(きんかず)ってご存じですか?ゾルゲ事件で逮捕された人ですが、このころ中国にいて、​シリン​は彼と秘密裏に婚約していたといいます(かなり年が離れているので、ほんとかなと私は思っていますが)。しかし、彼は劉少奇元国家主席らに近づきすぎて追放されてしまいます。(文革時、劉少奇は失脚し、自宅軟禁状態で迫害され殺されたようなもの)​​
 文化大革命による混乱の中で、兄は中国から追放されるけれど、​シリン​は苦しくても、中国を離れるべきではない、と自ら残るのですが、極左タイ人留学生たちから、ブルジョア出身であることで連日の自己批判を求められ、しまいにはラジオで父親批判放送をしてしまいます。そのあとの彼女はもう以前のような快活さを失い、何事にも心を動かさず、ジャガイモ以外のほとんどのものはのどを通らず、ただただ工場や農村で黙って肉体を動かすことで安らぎを得る日々を送ります。そのあと、体調不良で北京に連れ帰られて、在中イギリス人と知り合い、イギリス大使館を通じてやっと1970年にロンドンに逃げ出せます。​​
​​
​ 文革の非人道性はたいへん耐え難いものだったはずですが、それでもなお、彼女は中国の側に立とうとしています。
 ずっとあと、もう二度目の結婚相手がオランダ大使をしているときに、1989年の天安門事件が起きました。
 ヨーロッパの大使の中には彼女に「この虐殺をどう思うか。」と聞く人がいました。自分も責められているような気がして、中国を非難することを求められていることを感じながらもできなかったといいます。
​​​

 あそこで起きたことは恐るべき過ちだ。政府の堕落ぶりが、抗議に火を点けたのだ。そう思っている一方で、ヨーロッパの反応も私には気の重いものだった。何億もの人を食べさせていくこと、生死の境で生き延びる状況が長く続いたこと、それらがなにを意味するのかヨーロッパ人にはわからないのだ。彼らは豊かさを享受し、権力をほしいままにし、快適な生活を長く送ってきたのだから。​​

 と終わり近くで書いています。
​​ 翻訳なので、シリン・パタノタイの声と翻訳者田村志津枝の声がずれるように感じることもあります。それは、私がこの時代やタイや中国のことがもう少しわかっていれば気にならないのかもしれません。​​
 では、SIMAKUMAさん、次をどうぞよろしくお願いいたします。
(E・DEGUTI2020・06・29)

追記2024・02・02
​​ ​100days100bookcoversChallengeの投稿記事を ​​​100days 100bookcovers Challenge備忘録 ​(1日目~10日目)​​ (11日目~20日目) ​​​(21日目~30日目)​ ​​​(31日目~40日目)​ ​(41日目~50日目)というかたちまとめ始めました。日付にリンク先を貼りましたのでクリックしていただくと​備忘録が開きます。​​​​​​​​​​​​​​​​​


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最終更新日  2024.02.02 20:59:21
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