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週刊 読書案内 クラウス・コルドン「ベルリン1919(下)」(岩波少年文庫) クラウス・コルドン「ベルリン1919(上・下)」(岩波少年文庫)の下巻をようやく読み終えました。
上巻の案内でも書きましたが、1919年、ドイツの11月革命の敗北の過程が13歳の少年ヘルムート・ゲープハルト、通称ヘレ君とその家族や友達の日常の姿を通して描かれています。 読んでいて胸がふたがるというか、「ああ、そうなってしまうんだよな。」という気持ちを励ますことが難しい「歴史事実」のなかの民衆の日常が活写されている作品でした。 文字通り動乱のベルリンの町に生きている少年や少女、そして彼らの家族や年長の友人たちの、読んでいてハラハラしっぱなしというか、まさに命がけの日常が描かれていますが、その行動を通して、ヘレ君やその友達たちの成長してゆく姿が、2021年の「日本」という社会で「岩波少年文庫」にかじりついて「歴史の夢」を見ている67歳の老人を励ますのでした。 作家クラウス・コルドンは虐殺されたローザ・ルクセンブルグとカール・リープクネヒトの葬列の中でヘレの父にこんなこと場を語らせます。 「ふたりはまだ死んでいない。だれも殺せやしない。彼らは百年後も生きているだろう。エーベルトやシャイデマンやノスケのことをだれも話題にしなくなっても、人々はカールとローザのことを思い出すだろう。」 まあ、思い入れ過剰と笑われるのかもしれませんが、作家が「希望」を描こうとしていることに胸を打たれた読書でした。 三部作の第二部は「ベルリン1933」、第三部は「ベルリン1945」で、それぞれ新たな悲劇の始まりの年が取り上げられていますが、もう一つ、「11月9日」というドイツ現代史にとって忘れられない「日付」について「あとがき」でこんなふうに紹介してありました。 十一月九日は、ドイツにとっていろいろな意味で記念すべき日付です。一九一八年十一月九日、第一次世界大戦終結の鐘が鳴らされました。なんとも激動の100年です。しかし、この100年を現代の少年・少女たちに書き残そうとする作家の意欲には、やはり脱帽ですね。 作家を支えているのは、ローザ・ルクセンブルグのこんな言葉ではないでしょうか。 「自由とは常に異なる考えを持つ自由です」若い人たちが「自由」という言葉について考えたり、大切にしたりする社会になることを祈りますね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.11.04 00:58:50
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