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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2023.05.04
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ショーン・ベイカー「レッド・ロケット」シネ・リーブル神戸
 久々に、18禁映画を見ました。まあ、見る前には気づいていなかったんですが(笑)。ショーン・ベイカーという監督の「レッド・ロケット」という作品でした。まごうかたなきアメリカ映画でしたが、ハリウッド映画のニュアンスはありません。監督が独特というか、個人的というか、なんだろうな、こう作ったら見る人がイイネ!するだろうという気遣い絶無という印象でした。「レッド・ロケット」という題名の意味が、ボクには最後まで解らない映画でもありました。
 長距離バスの座席で寝ている男のシーンで始まりました。到着したのはテキサスの田舎町らしいのですが、ジーパンとTシャツだけのなりで、手ぶらです。バスを降りてなんだか殺風景な街を、今、ちょっと家から出て来たという風情で歩き始めます。遠くにコンビナートという感じの工場群が見えて、やがて、いかにもアメリカの田舎町という感じの住居にたどり着き、そこから、まあ、わけのわからないインチキ​炸裂!​でした。
 男はマイキー・セイバー(サイモン・レックス)といいます。元だか、現役だかわかりませんが、ポルノ映画の男優で、ロサンゼルスで尾羽うち枯らした結果、昔の(実は今も)結婚相手であるレクシー(ブリー・エルロッド)という女性の所に舞い戻ってきた宿無しで、バス代の残りの22ドルあるきりの一文無しで、着た切りスズメでした。
 久しぶりのマイキーの登場をあからさまに嫌がっていたレクシーは実の母親リルと暮らしています。昔はポルノ女優だったようですが、現在の収入はネット売春のようで、貧困と怠惰そのものの母娘家庭ですが、実は前夫(?)の子供がいて施設に預けています。ああ、それからを飼っています。
 義母、妻ともに嫌がっているのをものともせず、とにかく、あれこれ、ペラペラまくし立て、無理やり上がり込んで居座り続けるマイキーですが、レクシーレクシーで大麻の密売でマイキーが持ち帰る金に釣られながら、マイキーとの情事の再開に、
「まあ、どうでもいいわ・・・」
​ ということになっていきます。
 マイキーは昔馴染みから大麻を手に入れ、その密売で小遣い稼ぎを始めますが、​「夢」​はポルノ・スターとしての復活というか、とにかく、アブク銭をつかむことのようで、その「野望(?)」の餌食になるのがドーナツ屋アルバイトの高校生ストロベリー(スザンナ・サン)でした。
 17歳の女の子にポルノ・スターのを見させるためにマイキーが頼るのは、いつでも出まかせが云える口先と、あたかも「愛」の行為​であるかに思わせる、場所と時間を問わない肉体関係だけですが ― まあ、そこのところの描写が18禁の理由でしたが、こういうばかばかしいは見ないように18歳に見せたほうがいいとボクは思いました(笑) ― ちょっとスレているつもりの17歳は信じちゃうんですよねという、文無し口先男マイキーの一か月のお話でした。
アホか!
​といいたいところなのですが、​
ちょっと待てよ?
​と思い直しました。
​​ この映画で、マイキーというニーチャン、いや、オッちゃんか?、が自転車でうろつく夜の街を照らしているのは巨大なコンビナートの灯りです。義理の母のリルが、朝早くから夜遅くまでずっと見ているテレビ画面では、なんと、あのトランプが演説し続けています。マイキーが自慢するのは、ネット上に拡散している彼の主演したポルノ映像の評判で、レクシーは母と二人の窮窮とした生活を、寄る年波を厚化粧で隠したネット売春で支えています。​​
​​​ マイキーの出鱈目な行動はともかくも、そういう背景が繰り返し挿入されているところがこの映画の特徴です。割合、いいタイミングで、そういう現実的な要素が挿入されています。監督は、かなり意図的だと思いました。
 で、その意図って、ひょっとすると、
​​​現代アメリカをある角度で輪切りにすればこうなんだよ。​​​
 ​というメッセージだったんじゃないでしょうか。​​​
個人の自由こそを、尊重し、讃えていたはずの社会が、自己責任という御都合主義を持ち出さざるを得ないほどに貧困にあえいでいるにもかかわらず、疑似現実のネット社会こそが現実であるかのような錯覚の中ではモラルも常識も隠蔽され、忘れられ、失われていって、インチキがまかり通っているこの社会をどう思いますか?​
​ まあ、こういう問いかけですね。これって、かなりスルドイ問いですよね。この監督って、そういう人なんじゃないでしょうか。
 で、そう考え始めると、この映画の、映画として最も俊逸なのは、それらすべてを、残念ながら名前がわからないのですが、レクシーの家の、実に愛嬌のある飼い犬につぶさに見させているところだと思うんですね。犬の種類はボクにはわかりませんが、かなりでかい犬です。
 観客は「犬」なのです。
これって、どういう意味でしょうね。

 まあ、そういうふうに考え直してみると、とても
「あほか!」
​ とか言ってマイキーにあきれて馬鹿にするでは済まないどころか、他人ごとではないリアルがこの作品にはあるのではないかと、思わないでもないわけです。
 まあ、
「ひょっとして、そうかな?!」
​ 程度ですけどね。 でも、この監督の次の作品が出れば、きっと見るでしょうね。そういう意味でショーン・ベイカー監督拍手!でした。それから、文字通り素っ裸でエレクトーンを弾いて歌った、これがうまい!​ストロベリー​を演じたスザンナ・サンという女優さんに拍手!です。この女優さん、ものすごく素人ぽい、いや、ホントに素人(?)、のですが、ひょっとしたら化けそうですよ。
 まあ、それにしても、いろんな映画がありますねえ、でも、この映画「レッド・ロケット」ってどいう意味なんでしょうね。
 というのが最後まで引っ掛かりました(笑)。
監督 ショーン・ベイカー
脚本 ショーン・ベイカー  クリス・バーゴッチ
撮影 ドリュー・ダニエルズ
美術 ステフォニック
編集 ショーン・ベイカ
キャスト
サイモン・レックス(マイキー・セイバー)
ブリー・エルロッド(レクシー)
スザンナ・サン(ストロベリー)
2021年・130分・R18+・アメリカ
原題「Red Rocket」
2023・05・02-no058 ・シネ・リーブル神戸no182​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​

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最終更新日  2023.07.15 23:40:07
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