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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2023.05.22
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​​​​​ユホ・クオスマネン「コンパートメントNo.6」シネ・リーブル神戸 一緒に100days100bookcoversと題してFB上で本の紹介ごっこをしているお友達たちが
「いいよ!」
​ と噂し合っている映画、​ユホ・クオスマネン​というフィンランドの監督の​「コンパートメントNo.6」​という作品を見ました。こんなに後味のいい作品は久しぶりでした。​​​
 ​ラウラ(セイディ・ハーラ)​という女子学生がムルマンスクというロシア最北端、だから世界最北端の町まで夜行列車に乗って旅をするお話でした。目的はペトログリフというのですから古代の岩面彫刻の遺跡の見学です。
 ​ラウラ​歴史学を勉強しているらしいフィンランドの学生ですが、今は語学留学のためにモスクワにやって来ていて、​イリーナ(ディナーラ・ドルカーロワ)​という女性の先生の家に下宿しているようです。 
 で、その先生とは恋愛関係にあると、まあ、当人は思っているようですが、先生(?)、恋人(?)イリーナの発案で始まったはずの今回の旅なのですが、その恋人だか、先生だかのドタ・キャンで一人旅になっているという映画の始まりでした。
 この辺りで、
​「えっ?」​
 ​と思ったシーンがありました。それはイリーナのサロンに集まっていた人たちの誰かの発言でした。
​​「チャパーエフと空虚」読んだ?​​
​ ペレーヴィンというロシアの作家の​1990年代​の終わり頃の作品で、日本では
​「ロシアの村上春樹」​
​ とかのキャッチ・コピー付きで群像社というところから出版されていますが、確か映画にもなった作品です。
 そこでのラウラの返事は
​「買ったけど読んでいない・・・」​
​ とかなんとかのぐずぐずで、
​「そうか、そうか、ボクも買ったけど、読んでないわ(笑)。」​
 ​と好感を持ったのですが、そこから、部屋のベッドにもぐりこんで寝ているラウラに覆いかぶさるように「愛(?)」の行為に及ぶイリーナとのシーンが、なかなか象徴的でしたね。
 結局一人で乗ることになった夜行列車のコンパートメントのシーンに登場するのは若いロシア人のリョーハ(ユーリー・ボリソフ)ひとりです。
 で、この男が映画的には素晴らしいですね。プーチンとかアメリカだったらトランプとかを支持しそうな、いかにもなオニーさんで、コンパートメントに陣取ると、早速、ウォッカかなんかを飲みながら厚かましさ丸出しです。
​「列車は初めてか?」
「 何をしにどこに行く?」
「 何をやっている?」​
​ とどのつまりは
​「仕事は売春か?」​
​ と、のたもうて、ラウラの下半身に手を差し入れんばかりです。
 焦ったラウラは、何とか逃げ出そうと車掌と交渉したりもするのですが、結局、の反対のベッドの上段に逃げ込むしかなくて、いや、ホント、こころから同情しましたね。で、このシーンで面白かったのはの二つのセリフです。
「タイタニックは見たか?」
「愛しているってどういうんだ」
​ イリーナのサロンでは、ロシアの村上春樹が話題だったのですが、ここでは「タイタニック」です。時代はピッタリ符合しています。で、上段ベッドに立て籠もっているラウラは、今度は上から見下ろしていて、のセリフにこう答えるのです。
​「ハイスタ・ヴィットゥ」​
​ 字幕にどう出ていたか忘れましたが、要するに「くそったれ!」とか、まあ英語なら「ファック・ユー!」とかなのでしょうね。マア、映画好きならすぐにピンときそうですが、
​「おっ、このセリフ、どこで、どう落とすねん?」​
​ ですよね(笑)。
 で、ここからが、完全な(?)ロード・ムービーで、ボクの興味は、ラウラはいつ、上のベッドから下に降りてくるのかなのですが、ペテルブルグでの老婆との出会いとか、インチキなバックパッカー野郎の登場とか、いろいろあって面白いのですがなかなか降りてきません。とどのつまりは極北の地で・・・・。
 まあ、いろいろあった上でのことなのですが、終わりの方のシーンで、なんだか、寒々として、本当にペトルグリフとかあるのといぶかるような雪原というか、寒風吹きすさぶ海岸というかで二人が寝そべるんですが、いや、愛し合って抱き合うとかじゃなくてですよ、これが、いかにも寒くて​​
​「馬鹿じゃないの!」​​
 ​とは思うのですが、いいんですねえ(笑)。
 世界の果てで、人が人に会えた喜びが零下30度の寒風にさらされているって、サイコー!だと思いませんか(笑)。
 寒い中でよく頑張ったラウラ(セイディ・ハーラ)リョーハ(ユーリー・ボリソフ)拍手!ですね。
ペテルブルグのオバーちゃんを出した監督ユホ・クオスマネンにも拍手!
 ところで、ムルマンスクってロシア領なのですね。乗車するすぐにパスポートとか調べられるので、フィンランドノルウェーだと思い込んでいたのですが、家に帰って調べて
​「ああ、そうか!」​
​でした。
監督 ユホ・クオスマネン
原作 ロサ・リクソム
脚本 アンドニス・フェルドマニス リビア・ウルマン ユホ・クオスマネン
撮影 J=P・パッシ
美術 カリ・カンカーンパー
編集 ユッシ・ラウタニエミ
キャスト
セイディ・ハーラ(ラウラ)
ユーリー・ボリソフ(リョーハ)
ディナーラ・ドルカーロワ(イリーナ)
ユリア・アウグ

2021年・107分・G・フィンランド・ロシア・エストニア・ドイツ合作
原題「Hytti Nro 6」
2023・02・21-no024・シネ・リーブル神戸no193​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​

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最終更新日  2023.07.16 20:41:22
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