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オスカー・ブルニフィエ・西宮かおり訳・クレマン・ドゥヴォ―・絵
「よいこととわるいことって、なに?」(朝日出版社) 子ども向けの哲学書(?)らしいです。哲学書と呼ばれる本というのは、まあ、わけがわからんという感想に終着するのが常なのですが、絵本で「てつがく」を名乗るて評判になったのは、工藤直子さんの「てつがくのライオン」ですね。ボクが知っているのは佐野洋子さんの絵でしたが、長新太さんのバージョンもあるようです。 「てつがく」するには、どんな風な顔つきや、座り方でないといけないかという、ある意味、とても難しい「てつがく」だったと思うのですが、子どもたちにはとても喜ばれた絵本でしたね。 それから、子どもと哲学といえば、今年(2023年)の春先、元町映画館でやっていた「ぼくたちの哲学教室」というアイルランドのドキュメンタリーに、とてもカンドーしますた。考えこむ子供の表情を撮っているのがすばらしかったですね。 ヨーロッパにはこういう哲学教育の伝統があるんじゃないかと、その時、考えましたが、ちょうど、市民図書館の棚でこの絵本、「よいこととわるいことって、なに?」を見つけていたこともあったからですね。朝日出版社が「こども哲学」というシリーズで出している1冊です。 「問い」に対して「答え」がないところがいいですね。 「正直はいいことか?」 という「問い」に 「ううん、だって、本当のことをいったらけんかになることだってあるでしょ」 いかがでしょうか、この答え? 真面目な話、普通に社会人をなさっている立派な大人の方たちって、 「正直」が「いいこと」か?「わるいこと」か? お考えになったことがおありでしょうか? この絵本は、多分、一人で本を読むようになった小学生くらいが対象だと思うのですが、寝る前にオチビさんに読んであげることになっている、お母さんとか、お父さんとか、声に出して読みながら、しっかり悩んでほしい気がしますね。ボクは69歳ですが、ようやくわかったような気がします。答えは、永遠にないのかもしれないのです(笑)。 こっちのページは、もう、のけぞるというか、うれしくて唸りましたね。 「おなかがへったらどろぼうしてもいいとおもう?」 高校の国語の教科書に、芥川龍之介の「羅生門」という小説教材があります。高校の国語の先生になりたい大学生に授業をしてもらうことがあって、主人公の下人の行動について、まあ、彼は「腹が減ったから泥棒になる」わけですからね、訊きました。 「下人の行動をどう思うの」 さて、この絵本では、お腹が減った場合の泥棒について、どう「てつがく」するのでしょう。少なくとも、法にふれるから悪だと断定することはないでしょうね。 著者のオスカー・ブルニフィエという人はフランスあたりの哲学博士のようです。訳者の西宮かおりさんは、フランスあたりの現代哲学を翻訳なさっている方ですね。絵はクレマン・ドゥヴォ―という人ですが、上の写真をご覧になってとお分かりでしょうが、これまた、フランスあたりのマンガのイメージです。 学校の先生とかを志望する人は、子どもにあれこれキマリを押し付ける「センセーはね」という、わけのわからない自称口調を練習する前に、子どもに帰って、 「なんだかよくわかんない?!」 ことについて、くよ、くよ、イヤ、あれ、これ、考える練習をしましょうね(笑)。そういう時にはこの「こども哲学」シリーズは絶好の教科書になると思いますよ(笑)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.09.21 23:42:58
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