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カテゴリ:映画「シネリーブル神戸」でお昼寝
パオロ・タヴィアーノ「遺灰は語る」
タヴィアーニ兄弟というイタリアで映画を作ってきた兄弟がいて、兄のヴィト―リオが2018年に90歳でなくなり、弟のパオロが2022年、88歳で作られた作品だそうです。50年ほど前に「父 パードレ・パドローネ」という映画を見た記憶がありますが、内容は何も覚えていません。 「ウン?」 という気分になってやって来ました。 パオロ・タヴィアーニ監督の「遺灰は語る」です。 ピランデッロという、戦前のイタリア文学の巨匠、ムッソリーニを支持したファシスト作家で、ノーベル賞、光文社古典新訳シリーズの最初のころ、「月を見つけたチャウラ」(光文社文庫)という本が出て読んだような、読まなかったような、まあ、そういう、あやふやな記憶の人物がストックホルムでノーベル賞の授賞式に出ているシーンから映画は始まりました。 白黒の画面で、どうも実写のニュースフィルムのようですが、その作家の臨終のシーンあたりから独特の、まあ、そういうしか言い方がわかりません(笑)、映像が展開し始めます。 病室は、なんだかSF調ですし、その後の展開は、懐かしい、 あのリアリズム! って言いたい感じなのですが、ほとんどコメディです。 遺骨の搬送を命じられたシチリアからの特使の真面目くさった様子が笑えます。いっしょに飛行機に乗るのは縁起が悪いと言っておりてしまう乗客とか、ギリシアの壺は拝めないとごねる神父とか、新しい容器に移し替えようとするとあふれてしまう遺灰とか、子供用の棺の行進とそれを笑う市民とか、なんだかしみじみと可笑しいのです。で、移し替えるときに余ってしまった遺灰をどうするのかと思っていると、画面がフルカラーにかわって、真っ青な海に撒かれるシーンで遺灰の旅が終わりました。 すごいなあ・・・ まあ、なにがスゴイのだか、説明できないのですが、とりあえずスゴイわけで、ボーっと浸っていると、第2部「釘」が始まりました。こちらは色が印象的な作品で、こちらも凄いのですが、やっぱり説明するのが難しいのですね。 移民の父が営む酒場で楽しく踊っていたはずの少年が天から落ちてきた釘に人生を翻弄されるのですが、その少年の眼というか表情がすばらしくて見ってしまいます。終わってみると、どうも墓守の話だったようで、再び唸ってしまいました。 邦題は「遺灰は語る」ですが、イタリアでの題は「Leonora addio」、訳せば、「さらばレオノーラ」ということになるそうで、タヴィアーニ監督が兄弟で撮ろうとしていて撮れなかった作品の題らしいのですが、兄に先立たれて、残された弟、パオロ・タヴィアーニという88歳の監督が何を伝えようとして、この映画を撮ったのか、そう考えると、遺灰がシチリアの青い海に撒かれたシーンや、殺してしまった少女の墓の前に立つ、老いた少年の姿が浮かんできますね。 やっぱり、タヴィアーニ兄弟で撮った作品、できれば見てみたいものですね。なにはともあれ、パオロ・タヴィアーニという老監督に拍手!でした。 監督 パオロ・タヴィアーニ 製作 ドナテッラ・パレルモ 脚本 パオロ・タヴィアーニ 撮影 パオロ・カルネラ シモーネ・ザンパーニ 美術 エミータ・フリガート 衣装 リーナ・ネルリ・タヴィアーニ 編集 ロベルト・ペルピニャーニ 音楽 ニコラ・ピオバーニ キャスト ファブリツィオ・フェラカーネ(シチリア島アグリジェント市の特使) マッテオ・ピッティルーティ(バスティアネッド) ロベルト・ヘルリッカ(ピランデッロの声) 2022年・90分・PG12・イタリア 原題「Leonora addio」 2023・07・11・no89・シネ・リーブル神戸no200 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.07.30 14:47:13
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