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原泰久「キングダム(69)」(集英社) 2023年、夏のマンガ便で届いていた原泰久「キングダム」(集英社)の69巻の感想が、なかなか書けませんでした。65巻から始まった秦対趙の戦いは67巻で「どうせ。最後はおれが勝つ!」とうそぶいた秦六将の雄であり、異能の嫌われ者、桓騎将軍が秦軍の総大将として戦ってきたわけですが、69巻に至り、宜司平野の決戦で趙将李牧の術策にはまり壮絶な最期を遂げてしまいます。
大群のぶつかり合いと、その中での個々の戦闘シーンを描いていくのは、さぞかしご苦労様なお仕事だろうと思いますが、この桓騎の最後のシーンは、実に感動的でした。 「三年、秦攻赤麗・宜安。李牧率師、與戦肥下、却之。(幽繆(ゆうぼく)王三年、秦赤麗・宜安を攻む。李牧師を率い、興に肥下に戦い、之を却く。)」(史記) 「史記」、「戦国策」に残されている記事が詞書されたこのシーンは、ボクの中では「キングダム名シーン」の一つとして記憶に残りそうです。 さて、69巻の後半では、総大将桓騎の死によって、総崩れとなった秦軍の中にあって、この作品の主人公である「信」こと、飛信隊隊長、李信と、彼のライバル楽華・蒙恬(もうてん)という二人の若武者は命からがら敗走し、秦都咸陽にたどり着きます。 帰り着いた都咸陽では、趙に大敗した秦の方針転換が始まっていました。戦い続けてきた趙との最終決戦を迂回し、もう一つの隣国、韓の王族である、あの韓非子の招聘という新展開です。 中国の思想史には老子、荘子で知られる道家、性善説を主張し、孔子の教えを信じる儒家、荀子の性悪説に従い、法治を目指す法家という三通りの流れがありますが、その中で、法家の天才として名高い韓非子の登場です。 法治による国家経営を目指している秦王政が、夢に見る統一王朝のブレーンとして、儒教国家である韓にはいどころのない、法家の思想者韓非子に目を付けたというわけです。 その、韓非子招聘使節団の警護が帰国した李信の初仕事でした。まあ、そこからの顛末は70巻に続きますが、まあ、なによりも 韓非子登場! に唖然としました。作者である原泰久の気合というか、重層化して流れている歴史を、少年マンガと言えども、 手抜きなし!で描こうとする意欲ですね、そこにカンドーしました(笑)。戦いに次ぐ戦いの中で69巻までやってきた「キングダム」ですが、統治の思想家韓非子がどう描かれるのか、ワクワクします。それでは次は70巻です。また覗いてくださいね(笑)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.07.17 20:17:58
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