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カテゴリ:読書案内「翻訳小説・詩・他」
マーク・トウェイン「ジム・スマイリーの跳び蛙-マーク・トウェイン傑作選」(柴田元幸訳・ 新潮文庫) ひょっとした、この人くらいは読まれているのではあるまいかと淡い期待を寄せているマーク・トウェインでしたが、20歳くらいの方には、今や縁遠いようですね。
1835年生まれで1910年に亡くなったらしいですから、日本でいえば江戸時代の終わりから、明治の終わりくらいの方です。 「最初のアメリカ文学だ」と「武器よさらば」のヘミングウェイがいったとか、「最初のアメリカの作家だ!」と「八月の光」のフォークナーは いったとか、まあ、お二人ともノーベル文学賞ですから大変なのですが、一方で、たとえば「マーク・トウェイン」という筆名は、ミシシッピ川をさかのぼる汽船のための水深二尋の標識のことだとかいうわけで、真面目なんだかおふざけなんだかわからない人なのです(笑)。 以前、このブログで柴田元幸訳の「ハックルベリー・フィンの冒けん」を案内したことがあって、その時に、この文庫の話をチョット出したのですが、ほったらかしていました。 というわけで、今回の案内は「ジム・スマイリーの跳び蛙-マーク・トウェイン傑作選」(新潮文庫)です。 短編集というか、 これは小説なの? と尋ねたくなるような超短編も載っていて、 なんなんだよこれは? と引っかかるのですが、柴田元幸が巻末で解説しているのを読んで、膝を打つというか、ウフフフと笑うというかの作品群なのですが、きいたふうなことを言っても仕方がないので実例です。 開巻第1作が「石化人間」ですが、以下のとおりです。 しばらく前に、石化した男性がグラヴリー・フォードの南の山中で見つかった。石になったミイラは四肢も目鼻も完璧に残っていて、生前は明らかに義足だったと思われる左脚すら例外ではなかった。ちなみにその生前とは、故人を詳しく調べた学者の意見では一世紀近く前に終わったとのことである。ね、短いでしょ。本文は改行なしの1パラグラフですが、ちょっと読みにくいので引用する時に勝ってに改しましたこ。で、これを読んで、まあ、ボク程度に鈍い人はいきなり笑いはじめることができませんよね。冗談というかユーモアというか、コラムというべきか小説だというべきか、わかります?で、巻末にある解説がこれです。 「石化人間」(Ptrified Man) ね、笑えるでしょ。下に目次を貼りましたけど、まあ、長さはこの作品がとりわけ短いのですが、面白さはよく似ていて、柴田元幸の解説とセットで楽しんでいただきたというわけです。若い方のためのマーク・トウェイン入門に、というより、子どもころ「トム・ソーヤーの冒険」で読んだけど、っていうお暇な方の暇つぶしにぴったりかもですね(笑)。 目次 で、実はこの本はここの所いじっている池澤夏樹の「いつだって読むのは目の前の一冊なのだ」(作品社)のなかで2014年10月9日の日記に紹介されていますね。 フリオ・コルタサルという南米アルゼンチン出身の作家の短編作品と絡めて、この短編集の最後の作品「夢の恋人」が話題にしていますが、 おぼつかなくて切ない夢の描写がコルタサルに実によく似ている。 と評しています。ちなみにコルタサルは1914年生まれで1984年に亡くなっています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.12.14 00:48:12
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