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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2023.12.14
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マーク・トウェイン「ジム・スマイリーの跳び蛙-マーク・トウェイン傑作選」(柴田元幸訳・ 新潮文庫)
 ひょっとした、この人くらいは読まれているのではあるまいかと淡い期待を寄せているマーク・トウェインでしたが、20歳くらいの方には、今や縁遠いようですね。
​​​​​​​​​​​​​​​​ 1835年生まれ1910年に亡くなったらしいですから、日本でいえば江戸時代の終わりから、明治の終わりくらいの方です。
 ​「最初のアメリカ文学だ」​「武器よさらば」ヘミングウェイがいったとか、「最初のアメリカの作家だ!」「八月の光」フォークナーは いったとか、まあ、お二人ともノーベル文学賞ですから大変なのですが、一方で、たとえば「マーク・トウェイン」という筆名は、ミシシッピ川をさかのぼる汽船のための水深二尋の標識のことだとかいうわけで、真面目なんだかおふざけなんだかわからない人なのです(笑)。
 以前、このブログで柴田元幸訳「ハックルベリー・フィンの冒けん」を案内したことがあって、その時に、この文庫の話をチョット出したのですが、ほったらかしていました。​​​​​​​​​​​​​​​​

 というわけで、今回の案内は「ジム・スマイリーの跳び蛙-マーク・トウェイン傑作選」(新潮文庫)です。
 短編集というか、
​​これは小説なの?​​
​ と尋ねたくなるような超短編も載っていて、​​​
​なんなんだよこれは?​​​​​
​ ​​と引っかかるのですが、柴田元幸が巻末で解説しているのを読んで、膝を打つというか、ウフフフと笑うというかの作品群なのですが、きいたふうなことを言っても仕方がないので実例です。
​​ 開巻第1作「石化人間」ですが、以下のとおりです。​​
 しばらく前に、石化した男性がグラヴリー・フォードの南の山中で見つかった。石になったミイラは四肢も目鼻も完璧に残っていて、生前は明らかに義足だったと思われる左脚すら例外ではなかった。ちなみにその生前とは、故人を詳しく調べた学者の意見では一世紀近く前に終わったとのことである。
 その体は椅子に座った姿勢で、露出した地層に寄りかかり、物思いにふけるような風情、右手の親指を鼻の側面にあてている。左の親指はあごを軽く支え、人差指は左の目頭を押して、目は半ば開けている。右目は閉じていて、右手の指残り四本は大きく広げられている。この奇妙な自然の変種は近隣で大いに話題となり、情報筋によればハンボルト・シティの判事スーエルだかソーエルだかが要請を受けてただちに現場へ赴き、死因審問を行った。陪審の評決は「死因は長時間の放置だと思われる」云々というものであった。
 近所の人々がこの気の毒な人物の埋葬を買って出、実際やる気満々の様子であったが、遺体を動かそうとしたところ、頭上の岩から長年にわたり水が垂れていて、それが背中を伝って流れ、体の下に石灰の沈殿物が築盛されて、これが糊として機能し、椅子の役を果たしている岩に体が堅固無比に接着されており、慈悲深い市民たちは火薬を用いて故人をこの位置から引き剥がそうとしたがS判事はこれを禁じた。そのような手段は冒瀆に等しいという判事の意見は誠に正当にして適切といえよう。
 誰もが石男を見にくる。過去五、六週間のあいだに三百人ほどがこの硬化した人物の許を訪れた。(一八六二年十月四日)(P10~11)
 ​ね、短いでしょ。本文は改行なしの1パラグラフですが、ちょっと読みにくいので引用する時に勝ってに改しましたこ。で、これを読んで、まあ、ボク程度に鈍い人はいきなり笑いはじめることができませんよね。冗談というかユーモアというか、コラムというべきか小説だというべきか、わかります?で、巻末にある解説がこれです。
「石化人間」(Ptrified Man)
 一八六二年十月四日、「マーク・トウェイン」の筆名を使い始める以前、本名の「サミュエル・クレメンズ」の名で「テリトリアル・エンタプライズ」紙に掲載された。
 トウェイン自身が後に述懐したところによれば、当時、「石化物」をはじめとする自然の驚異の発見譚が流行していて、その過熱ぶりを茶化すためと、ハンボルト・カウンティの判事スーアルをからかうためにこの文章は書かれた。石化した人物の採っている「あっかんべえ」のポーズから見て悪ふざけのデッチ上げあることは明白だが、トウェインによれば当時本気にした人は多く、イギリスの医学雑誌「ランセット」にも採り上げられと本人は称している。が、実のところ「ランセット」にそのような記述は見あたらない。(P243)
​​ ね、笑えるでしょ。下に目次を貼りましたけど、まあ、長さはこの作品がとりわけ短いのですが、面白さはよく似ていて、柴田元幸の解説とセットで楽しんでいただきたというわけです。若い方のためのマーク・トウェイン入門に、というより、子どもころ「トム・ソーヤーの冒険」で読んだけど、っていうお暇な方の暇つぶしにぴったりかもですね(笑)。​​
  目次
石化人間
風邪を治すには
スミス対ジョーンズ事件の証拠
ジム・スマイリーの跳び蛙
ワシントン将軍の黒人従者―伝記的素描
私の農業新聞作り
経済学
本当の話―一語一句聞いたとおり
盗まれた白い象
失敗に終わった行軍の個人史
フェニモア・クーパーの文学的犯罪
物語の語り方
夢の恋人​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​
​​​​​​​​​​ ​で、実は​この本​はここの所いじっている池澤夏樹の​「いつだって読むのは目の前の一冊なのだ」(作品社)​のなかで2014年10月9日の日記に紹介されていますね。
 フリオ・コルタサルという南米アルゼンチン出身の作家の短編作品と絡めて、この短編集の最後の作品「夢の恋人」が話題にしていますが、
おぼつかなくて切ない夢の描写がコルタサルに実によく似ている。
 と評しています。ちなみにコルタサル1914年生まれ1984年に亡くなっています。​​​​​​​​​​​​
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最終更新日  2023.12.14 00:48:12
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