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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2024.06.09
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​​​ラジ・リ「バティモン5」シネリーブル神戸​​
​​​ 今日は69歳最後の日です。午前中、退院後初めての通院で「快癒」と診断されて、すっかり元気になって出かけたシネリーブルでしたが、
​​それで?それで?​​
​ と畳みかけられるように見終えて、すっかり元気を失った作品でした(笑)。これが現実なのですね。​​​
​​​ 見たのは、数年前に見た「レ・ミゼラブル」で、フランスにおける貧困の、移民や難民の、実相を描いていて度肝を抜かれた、自身もアフリカ生まれのフランスの監督ラジ・リの最新作「バティモン5」でした。​​​
​​​​​​​​ 副題に「望まれざる者」とついていますが、原題は「Batiment 5」、フランスにやって来た「移民」たちが、長年住んできた高層の「老朽アパート」が立ち並び、塀には「落書き」が書き散らされ、子供たちが「深夜徘徊」し、店をもてない​「違法営業」​が横行するパリのスラム地区通称のようです。​​​​​​​​
​ この「バティモン5」の再開発をめぐり、クリスマスの夜におこった出来事が映画の事件でした。​
​​ 見終えて、ナチスのホロコーストで、ユダヤ人輸送の責任者だったアイヒマンという人物が裁判で語ったと言われている
​​「命令に従っただけです。」​​
​ という言葉を思い出しました。​​
​​​​​​​​​​​​​ この映画でも、市政の懸案事項である、「バティモン5」再開発計画を実行に移す市長がいて、市長立ち退き強制執行の命令書を住民に届ける市役所員がいて、市役所員の安全を確保する武装警察官が出てきます。公的な、だから、普通、正しいと思い込んでしまう命令があり、命令に従って行動する公務員警官がいて、スラム街撤去計画は実行され、裕福でのんきな市民は楽しいクリスマスの夜を過ごしています。​​​​​​​​​​​​​
​​​​​​​​​​​​​ 映画は、市長のスタンドプレイだか人気取りだかによる強制退去命令によって、そこで暮らす人々が生活そのものを奪われた「バティモン5」で暮らす二人の若い男女の行動がクライマックスでしたが、その一人であるブラズは、心情的にはボクも強い共感を感じましたが、怒りのあまり「テロ」への誘惑に取りつかれ、クリスマスを祝う市長宅の焼き討ちを実行しはじめますが、「テロ」を否定するもう一人、アビーブラズの凶行をすんでのところで押しとどめながらも、「個」としてなすすべのない現実の闇の中を立ち去っていくのでした。
 この、なんともいえないなすすべのないラストに、​
​​​この若い監督の足掻きのようなものを実感しました。​​​
​​​​​​​​​​​​​​ 人間の​​​​​​​​​​​​​​社会というのは、その社会を構成する「普通」の構成員、所謂、市民ですが、その市民による共同的な思い込みによってなりたっているわけで、「国家」とか、「地方公共団体」とかの制度であれ、「法」や、「規則」であれ、あるいは​「自由」​とか「平等」とかのスローガンであれ、「市長」とか、「警察官」とか、「市民」とかいう、職掌や身分(?)も、作中での「クリスマス」をめぐるアビーの発言が如実に語っていますが、
​みんな思い込みで成り立っているのだ!​​
 ​と思います。市長として、自分の亭主が何をしたかなんて、市長の奥さんにさえわからない。わからせるためには、まあ、市長の家に火でもつけるしかないという考えも浮かぶわけですが、それでは解決にならないわけです。​​​​​​​​​​​​​​
​ まあ、そういう、のんきな人たちによる思い込みから消し去られた「現実」が、いかに苛酷であるかを、ここまでまっすぐに突き付けようと足掻いているかの作品には、そうそう、出逢えるものではないのではないでしょうか。​
​​ 「貧困」、「移民」という現代フランス社会、あるいは世界中の社会の実態を直視しようとする意志に満ちた監督の足掻きとためらい拍手!でした。​​​ まあ、理由を考えだすと、あれこれ長くなりそうなのですが、この作品に対して極東の島国の映画配給業者が「望まれざる者」と副題を付け、「不都合な真実」とチラシで謳っているのですが、見終えたボクは、なんか、引っかかったんですね。うまくいえませんが、この作品を、そういう第三者的視点で見ることって、極東の島国の住人には可能なんでしょうかね?​​​

監督 ラジ・リ
製作 トゥフィク・アヤディ クリストフ・バラル
脚本 ラジ・リ ジョルダーノ・ジェデルリーニ
撮影 ジュリアン・プパール
編集 フローラ・ボルピエール
音楽 ピンク・ノイズ
キャスト
アンタ・ディアウ(アビー:アフリカ系移民)
アリストート・ルインドゥラ(ブラズ:アフリカ系移民)
アレクシス・マネンティ(ピエール・フォルジュ:新任市長・小児科医)
オレリア・プティ(ナタリー・フォルジュ:市長の妻)
スティーブ・ティアンチュー(ロジェ・ロシュ:副市長)
ジャンヌ・バリバール(アニエス・ミアス:政党幹部)
2023年・105分・G・フランス・ベルギー合作
原題「Batiment 5」
2024・06・04・no075・シネリーブル神戸no248
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追記
 ところで、このブログをご覧いただいた皆様で楽天IDをお持ちの方は、まあ、なくても大丈夫かもですが、ページの一番下の、多分、楽天のイイネボタンを押してみてくださいね。ポイントがたまるんだそうです(笑)​​
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最終更新日  2024.06.12 11:22:35
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