あの頃の夏の夜のように…
窓を開け、ほんの僅かの灯りだけを残し、少しだけ考えごと…。今夜は夏の夜だというのに、風を感じ、心地よい。こんな時間と空間の中で過ごすことが以前はよくあった。もう何年も前のこと…。私がまだ10代だった頃のこと…。自分の夢を描きながらも、現状を打開できずにもがき苦しんでいたあの頃…。周りの友人は皆、私の前を歩んでいた。私はとても孤独だった…。孤独の中で、前へ進もうと、皆のところに辿り着こうともがいていた。あの頃、今の自分を想像すらできなかった。そしてあの頃描いていた夢とこの現実とは大きくかけ離れている。あの頃に描いていた夢と違う夢を今は描いている。でも今は孤独じゃない。孤独じゃない。でも今の私はあの頃の私とどこか似ている…。現実の中で、なかなか前に進めないことにもがいている。成長していないのだろうか…。いや、そうじゃない。きっとあの頃よりも確実に成長していると思う。でもあの頃とどこか似ている。ふとあの頃、よく聴いていた音楽を聴きたくなった。その音楽を聴きながら、あの頃と同じように思いに耽った…。今のことを思っているはずなのに、どこか懐かしく思えた…。あの頃、あれだけ苦しかったことも乗り越えてきた。その後に起こったいろいろなことも乗り越えてきた。今までだってそうだったはず…。ただその瞬間が苦しかったわけじゃない。その先にある目指すところに辿り着くために苦しんでいたのだ。現状が忙しいとそういうことさえも忘れてしまう…。なぜ今が苦しいのか…。なぜ今こんなにも、もがいているのか…。あの頃と同じような時間と空間をつくることで、そんな過去の自分が思っていたことが一気に甦った。光を求めてもがき、そして一筋の光を見つける。でもなかなかその一筋の光には辿り着くことができない。そのときはまたもがき、そしてまた前に進む。それを今まで繰り返してきた。きっとこれからもそれは同じこと…。そんなすぐには、辿り着くことなんてできはしない。でも今は独りじゃない。その苦しさもあの頃の半分。それなのに、どうしてこんなにも、苦しいのだろう…。暗闇の中に浮かぶ僅かな灯りを眺めていて気がついた。今の私は、自分が目指す一筋の光を見ているようでしっかり見ないで歩いていると…。暗闇の中にいる不安に囚われて、足元ばかりを見ていると…。郷愁の中に、現在(いま)の自分を照らし合わせ、自分が何をすべきかがぼんやりと見えた気がした…。