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カテゴリ:枕草子
アジサイ
匂い 春、山里などへ出かけるのは実に楽しい。 草木も水も青く、草原を歩いていると湿地などがあって、従者が歩くたびに水滴がはね上がるのも面白い。 道の両側に続く生垣の枝が、牛車の屋根に差し掛かるのを、急いで取ろうとしたけど、すっと手から離れてしまって残念だ。 ヨモギが車に押しつぶされて、良い匂いが漂ってくる。
夏、夕涼みの頃、人の顔がはっきり見えないくらいの薄暗闇の中を、身分の高い人の車が、後ろの簾を上げて走らせて行く様子は涼しげだ。 まして、その車の中で、琵琶を?き鳴らし、笛の音など聞こえてくると、すれ違って行ってしまうのが残念に思われる。 そんなすれ違いの時、牛の皮紐の匂いが、奇妙で嗅ぎ慣れないものなのに、良い匂いに感じられるのも、我ながら正気の沙汰とも思えない。
真っ暗な夜、車の前の松明の煙の匂いが、車の内にこもっているのも、夏の夜らしい趣がある。
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最終更新日
2010.06.04 13:22:30
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