二月は…
思い切りはしゃぐ月。 寂しい月だから。 別れた夫が末期がんと分かり入院した月。 その彼の誕生月で、わたしの誕生月。 「ごめん。最後まで責任取れなくて」 「なにさ、卑怯者。わたしの人生の責任を取ってよ。わたしの人生を返してよ」 わたしの口からは、彼を責める言葉しか出てこなかった。 誰も居ない、緑色の非常灯だけが光る待合室で、わたしはただ号泣した。 彼はわたしの背中に大きな手を当ててさすった。 それしか出来ることがないといった風情で……。 でも本当は、一番辛くて悲しいのは、余命を宣告された彼自身のはずだった。 それなのにわたしは、先に逝ってしまう彼を恨めしいと思った。 彼が不覚にもわたしに与えてしまった現実を、飲み込めていなかった。 胸の奥から込み上げてくる、悲しみや悔しさ、辛さにあてがう術がなかったから。 悲しみは、一年、一年と薄らいで行くけれど。 わたしの中の悔しさは年々増して行く。 だから。 二月は、はしゃぎ月。 彼とわたしの。 そんな月。