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カテゴリ:気になった映画・ドラマ
雨に感謝の 映画デー 『おくりびと』を観た。主演の本木雅弘が青木新門 著『納棺夫日記』を読んで感銘を受け 監督の滝田洋二郎に持ち込んで映画化が実現したという。 昔、遠藤周作の晩年の作品「深い河」を読んだ時に、そのあとに『「深い河」を探る』という 対談集も読んだ。その対談相手の一人が本木雅弘だった。最初読んだ時は、ん?俳優さ んがなぜ?と思ったが、彼はすごい読書家で勉強家だということが後で知った。この「深 い川」も死者を扱った小説だった。 期待した通りの素敵な映画だった。
死は誰もが避けて通れないという言葉はよく聞くが、「死は誰もが通過する門のようなも の」という台詞は耳新しかった、この映画の主人公は死者を納棺するという生業だ。忌み 嫌われる職業だろう。だからこそ死をどう捉えるかが大切になる。門の先があるから死に 装束が必要であるし、それは貧しい人も裕福な人も、自ら死を選んだ人も、そうでない人 も、苦しんで死んだひとも、穏やかに死を迎えた人も、生前の幸・不幸と関係なく、新しい 世界へ入っていくための門を通過するときに、穏やかな顔立ちで、清らかな身支度をさせ て通過してもらう儀式が大切なんだと映画は言っているようだ。 死は重たいテーマだ。だから暗くなりがちなところを、あえて始めは観客の負担を軽くする ようにユーモラスに笑いを誘いながら描いてくれる。そしていつしか深いテーマが目の前に 繰り広げられて涙がとどめもなくこぼれてくる。そして観終わった後に穏やかな暖かいもの が残っていた。
主演の本木もさることながら納棺業の雇い主の山崎努、清廉な妻役の広末涼子、「死は 誰もが通過する門」と語る火葬場の職員の笹野高司は何ともいい演技をしている、巧い。 第32回モントリオール世界映画祭グランプリを受賞した。そうだろうなぁ。
≪ストーリー≫ 主人公は才能があまりないと自覚しているチェロ奏者。所属している楽団が解散して路頭 に迷い、死んだ母の残した郷里の家に帰り職を探す。そして見つかったのが思いもよらぬ 納棺師の仕事だった。 本人もはじめはさげすんでいたが、さまざまな死者と、その遺族を前にして徐々に納棺 師の役割、その意義を身をもって感じるようになっていく。 頑なに納棺師の仕事をやめてほしいと懇願する妻も、親しい人(吉行和子)の死を前に粛 然とその業を行う夫に目をみはる。 そして主人公に幼少のころは母と自分を捨てて家を出た父親が死んだという知らせが届 く。苦悩しながら父の亡骸と対面する。納棺師として父の旅支度をする。父親の冷たくなっ た手をみると、幼少のころ川原で拾い父にあげた石ころが大切に握られていた。 涙をこぼしながら父親を愛おしそうに触れる夫を妻がやさしく見守る。
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