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2011年08月01日
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最初は 『 小川の辺 』から

原作が藤沢周平だと、どうしても観たくなる。しかも主演が『 山桜 』で好演した東山紀之となると居ても立ってもいられない。そそくさと映画館に足が向いてしまった。

戌井朔之助(東山紀之)は主君の命により藩政を批判して脱藩した妹の夫である藩士を討ちにいく。二人は藩で1,2を争う剣術の使い手。しかも妹も朔之助と共に幼くして父から剣術の指導を受けた腕前を持つ。夫を討てば妹は刃向かい剣を交えることになるかもしれない。その危険を回避したいと願って、幼いころから妹に想いを寄せていた若党が付き従って道中を共にする。終に小川の辺の小屋に密かに隠れていた二人を見出す。

主君の命に従い敢然と立ち合う凛々しさ、討ち果たした後に妹と剣を交わし心惑う様子、さらには若党の押し殺すような気配、そしてラスト...。見ごたえがあった。

小川の辺1.jpg  小川の辺2.jpg

 

次は 『星守る犬』 で涙して

熟年離婚が世間でかまびすしくなって久しい。大体にして原因は無口と言うか、感謝の気持ちがありながら言葉に表現できない、不器用な夫に原因があるようだ。この映画も、そんな男が主人公である。相談されても「好きなよう(いいよう)にしたら いいんじゃないの」と答えてしまう。決して悪気があってのことじゃない。そんな、頼りのない、主体性のない男を西田敏之が好演している。

熟年離婚の末路も寂しそうだが、映画の男も犬との逃避行の末、キャンプ場で死後半年経って白骨体として、犬の遺体と共に発見される。行路死亡人として対応にあたった役所の若い職員が、車中で死んだこの男の人生に強く興味を持ち、持ち物だったと思われるレシートを頼りに、男の最期を辿る旅に出る...。

旅の途中で出くわす人たちとのエピソードが温かく悲しい。主人思いの犬のしぐさが優しく愛おしい。そしてあまりに淋しくつらいラストだった。西田の巧さは言うに及ばないが、何よりも驚いたのは犬の名演技だ。

 星守る犬2.jpg   星守る犬3.jpg

 

31日に 『 アレクセイと泉 』 立ち止まり 考える

この映画、福島の原発事故に押しつぶされそうになって暮らす身には、ふと立ち止まって、もう一度自分の置かれている状態を見つめ、考え直してみる機会になった気がする。

チェルノブイリ原発の爆発事故で被災したベルルーシの小さな村ブルシチェのドキュメンタリーだ。原発から100数十キロの村で、森からも畑からも、採取されたキノコからも放射性物質が検出される。多くの人が避難する中、村の高齢者たちの多くが生まれ育った土地に残ることを選択した。その中に一人の青年アレクセイがいた。

アレクセイと泉2.jpg

この村には人々の生活に欠かせない水を与えてくれる泉がある。村中が汚染されているのに、この泉からは放射性物質は検出されなかった。水は大地を100年かけて浸透して命の水を湧き出す。映画は、村の人々の電力に依存しない、薪を割って燃料にして、泉の水を汲み、育てた小麦とジャガイモを主食に、野菜を作り、豊かな自然の中で営々と暮らしている、その姿を坦々と映しながら、「この百年、人間は何の豊かさ求めてきたのだろう。豊かさとは何なんだろう」と暗黙に語りかける。

今回は、上映後、監督の本橋成一さんから、この映画の製作の動機について話しを聞くことができた。汚染された地にとどまっていた人を取材した時に 『 何処へ出て行けって言うんだい 人間が汚してしまった土地なんだろう 』 この言葉が耳から離れなかったという。

本橋さんが言いたかったのは、汚染された地に留まれと言いたかったのでは勿論ない。原子力発電によって生み出された電気を何の疑いもなく享受してきた私たち自身が、まぎれもなくいた事実から目をそらさず、逃げ出さないでいてほしいと言いたかったのだろう。それは "人間が"という言葉で全てを一括りにすることで"危険はない”と慢心して原発を推し進めてきた人たちを免罪してしまうことではない。これまでの原発に依存した電力大量消費の在り方に、一人ひとりが無関心であってはならないと警鐘を鳴らしたかったに違いない。






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最終更新日  2011年08月01日 16時05分52秒
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