奥田英朗『サウスバウンド』
サウスバウンド なかなか予約が回ってこないので繋ぎに借りてきた2005年の奥田作品。映画化もされていたのですね。 父は元過激派。母も刑務所に入っていたことがある?そんな異端な人たちを小学6年生を語り手にすることですんなりと読ませているんですね。なるほど。 前半はその二郎が不良に立ち向かっていく物語で、そこに父を同志と尊敬するお兄さんが同居してきて事態はどんどん非日常へと向かっていくのでした。 ここまでは、かつての山中恒の作品を読んでいるようで、過激だけど先が気になってどんどん進んでいきます。小学生がここまで考え行動できるかという疑問はあるにしても、悪意の塊であるカツをやっつけるのは痛快です。強いはずの父が結局何の手出しもしないというのがいいですね。 後半は一家が西表島に引っ越すところから始まります。島に語り継がれる英雄の子孫と信じられている父は島民から熱烈な歓迎を受け、食料から住居までさまざまな親切を受けます。欲を持たなければ国家なんていらない、二郎は次第に父の言っていた荒唐無稽な言葉を支持するようになっていきます。 リゾートホテル反対運動の救世主としてマスコミにも登場する父は全国的な有名人となりますが、不法占拠ということで最後には家が壊されてしまいます。でも、やはりこの父はただものではなかったのです。。。。 長々あらすじを書いていまいましたが、どうでしょう、父の言うことは痛快ではありますが、やはり危険な気がします。カリスマの登場を期待するのは時代が危ういということでもあります。 もちろん、これはフィクションなわけで、楽しく読めばいいのでしょうけど。 革命=過激派のイメージが色濃いせいでしょうか、どこか淋しさを憶えてしまったのでした。