可愛がりたかった伯父。可愛がられ方を知らなかった私。それでも見守ってくれる形見の腕時計。
10年前に亡くなった伯父から20年前にもらった腕時計。当時は携帯なんて持ってなくて腕時計がないと時間を確認できず困っていた。今もあるのか分からないけれどSCAPAというブランド。東京に遊びに行ったとき銀座松坂屋だったか、ふらりと立ち寄って「なんでもいいよ、選びなよ」と買ってくれたスクエアのシルバーフェイス&ブラックベルト。数年は使っていたが電池切れで動かなくなった。その頃にはすでに携帯というものを持っていたので時間の確認には不便がなく。腕時計は出番をなくし、ジュエリーボックスの奥底へと追いやられていた。子どものいなかった伯父は、私たち兄弟をひどく可愛がってくれていた。・・・らしいのだが、そもそも気まぐれな人。あまりにもいきなり、あまりにも気軽に「買ってあげるよ」と言われても私たち兄弟は戸惑うばかり。5回に一回くらい、遠慮がちに甘える程度で伯父の「可愛がりたい願望」を満たしてあげられなかっただろうと今にして思う。私の結婚式の日。ウエディングドレスでの入場は父にエスコートしてもらったがお色直し退場は、「パパ」と呼んでいた伯父にお願いした。父との入場で涙のかけらもなかったのに伯父との退場はお互いに顔も見られないほど涙を堪えながらの思い出深いものになった。まさか、それから2年もたたないうちに会えなくなるとは思わずに。伯父がこの世を去ったちょうど2か月後。そして、伯父にエスコートされたあの涙の日からちょうど2年後に長女を妊娠したことが分かった。なかなか降りてこない私たちの娘に伯父は空に昇って「ほら、お母さんが待ってるよ」と背中を押してくれたのかも、と勝手に思っている。今でも書きながら涙がこぼれる、パパのエスコート。生前より繋がりが強くなったような気がするのはなぜだろう。そして子どもたちもだいぶ成長し、時間制限はあれど働くことができるようになった。一昨年までは雇われていたが、去年起業。不安定極まりない”起業”という道を選び、少しでも何かに頼りたかったのか。ジュエリーボックスの奥の小さな腕時計を引っ張り出し「パパ、見守っててね」とつぶやきながら身に着けた。今では大切な”お仕事スイッチ”である。******************************************さすがに20年前のベルトは、もうへたりまくっていつ切れるとも分からない。元はブラックベルトだが、ラッキーカラーでもあるネイビーにしたくて探していた。9mmベルトというのは、どの時計店に行っても在庫は数本。その中にネイビーがあったことはない。そして今日、やっと見つけた。