カテゴリ:小説 または トラバボケ
なぜ私は熊なの?
幼い時ヤンボルは母にそう尋ねた。母の顔色はさっと曇り、「そんな事人の前では二度と言ってはダメ」ときつくたしなめられた。 トコロで中央が苗字でヤンボルが名前なのだろうか?詳細をご存知の方お教えください<(_ _)>彼女の姉は普通の人・・・に見える。 普通の人かどうか・・・こちらをご参照の上ご判断ください。私は熊なんだ。だから・・・何だと言うのだ? 大体外見は熊だけど力は普通の人程にも無い。暴力反対だ。 外見は熊だけどドラえもんに似ていると言われたことがある。可愛いじゃない? 外見が熊で困るのは・・・ズボンよ。 どうひいき目に見てもNBAのユニホームみたいな股下。悪く言えば、よいよいになっちゃったお爺ちゃんが大人用パンパースにてんこ盛りで大※をしてしまって、垂れ下がった股引のような股下。足さえ長ければ普通の人に見える・・・かもしれない。 お願い誰かそう言って! 幼い時、普通の人間である父や母を呪ったこともある。 「私はきっと貰われっこなんだ。だからお父さんやお母さんやお爺ちゃんやお婆さんとぜんぜん似てないんだ。きっと・・・川で拾われた熊なのよ。きっと石狩川の上流には私の本当のお父さん熊やお母さん熊がいて私の帰りを待っている・・・そうよ、そうに違いないは!」 彼女は思い入れが激しい人だった。そう思うと居ても立ってもいられない。一日でも早く石狩川の上流に行かなければ・・・。お父さん熊が私を探しに里に下りて、地元猟友会に射殺されてしまうかもしれない。お母さん熊が―以下略―。 ヤンボルは幼いながらも体力はあった、熊だから。夏休みに石狩川で子供会のキャンプがある日を決行日に決めた。 その日が近づくにつれヤンボルはキャンプ用と称して食料を貯め始めた。そして大学の山岳部のお兄さんお姉さんもすでに使わないキスリングという大型のザックを背負って、自分の生まれ故郷と勝手に思い込んでいる石狩川上流を目指した。そのとき見送った母が一言・・・ 「せめて前と同じ豊平川にしてくれないかしら・・・。」と言うと深いため息をついた。そうヤンボルは幼稚園の時すでに豊平川を自力でさかのぼっており、そこは自分の故郷じゃない事を確認していた。 そんなヤンボルでも石狩川を遡るのは過酷だ。しかし思い込みが激しく星目がちな円らな瞳で一点しか見ることの無い彼女の辞書には戻るという文字は無かった。 一日、二日、三日、四日・・・一週間経った。本当の子ども会のキャンプに行った子は2日前に帰ってきている。我が子が人並み外れていることを熟知している両親も、さすがに明日は石狩岳に行こうと相談していたその夜、家の前にサイレンを鳴らしながらパトカーがきた。 「お子さんですね。」 パトカーから降りてきたヤンボルを母は泣きながら抱きしめ、父はそっと頭に手を置いてくれた。 「大雪から戻る途中で自転車が壊れちゃったようで・・・」 「ど、何処にいたんですか?」父が咳き込むように尋ねた。 「国道39号線の安足間のあたりだそうです。私のパトカーは乗りつきの2台目ですから。」 思春期に、少女から大人に変わる頃中央ヤンボルも発情期を迎えた。 しかし自分は熊だから普通の男の人はベアハッグで殺してしまうかもしれない。キスしようとしても口が尖がっているから、じっと相手の目が見えてしまいそうで恥ずかしい。そして何より・・・元々服を着ていないから恥じらいがない女と思われているのでは・・・。取り越し苦労95パーセントに4.8パーセントの容姿への不安と、それに小さじ一杯の真実。 彼女ははじらう乙雌として周りからの好奇の視線と発散するたくましい野生のフェロモンで10代を思いっきり駆け抜けた。 周りの人はエライ迷惑だったろうなぁ。 そんなヤンボルにも番が出来た。熊旦那(仮)という名の、立派(?)な丸い雄熊だ。 熊旦那はネクタイを締め、ヤンボルのためはたまたミャー氏のため、そして自分のビールの為に、川で鮭を取ったり蜂の巣を壊して蜂蜜をなめたりする代わりに、会社に行って稼いでくる。立派だ!熊にしては立派過ぎる。そんな人里に住む熊の生態を4コマ漫画にしたのが「くま夫婦」。 将来自分の子供が熊やイグアナ、鳥、猿、犬などに見えるかもしれません。そんな時家のどこかに買っておいた「くま夫婦」を取り出して、じっくりと読むといいでしょう。きっと必要になりますよ。別に人間にしか見えない人にもどうぞ。所詮人間も動物ですから。 応援ブログ トリビュート作品を贈ろう(サプライズ)にトラックバック。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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