カテゴリ:歴史よもやま話
栴檀の花が咲きはじめ、近づくと甘い香りが漂ってくる。 栴檀(せんだん)は、古くは楝(おうち)と呼ばれていた。 古来、栴檀の花は甘い芳香を放つことで知られていたようで、 大伴家持や山上憶良は、栴檀の花を詠んだ和歌を残している。 中国には、栴檀に纏わる一つの物語が残されている。 それは、愚かな王に対して忠義を尽くした家臣の話であり、 中華ちまきの起源のお話でもある。 それは、春秋戦国時代のこと... 楚(そ)の国に屈原(くつげん)あり、といわれるほど有能な政治家がいた。 折りしも、魏(ぎ)を滅ぼし、強大になりつつあった秦(しん)は、楚の征服を狙って、 秦王(後の始皇帝)は、宰相の張儀に楚を弱体化させる策を練らせた。 しかし、楚の屈原は秦の謀略を見抜き、「秦は信用できぬ!」と、 何度も王に進言して、必死で同盟を破棄するようにと説得した。 しかし、秦の旨い話に乗りたい楚王は屈原の言葉に耳を貸さず、 屈原は絶望して、汨羅(べきら)の淵に入水して果てた。 しばらくして、楚は秦に滅ぼされ、秦王は始皇帝と名乗る。 楚の人々は、最後まで忠義を尽くそうとした屈原の死を悼んで、 毎年五月五日、屈原の命日には竹筒に米を入れて汨羅の水に投じ霊を慰めた。 時を経て漢代になって、楚の区曲という人が夢で屈原と名乗る士人と出会った。 屈原は「毎年供えてくれるのは有難いがせっかくの米がいつも蛟竜に盗られる」 「蛟竜が忌み嫌う楝(おうち)の葉で包み、五綵糸で結んで欲しい」と伝えたという... この逸話が、中華ちまきのはじまりだそうだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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