カテゴリ:民話とあやかしの世界
次の日、美沙は何事もなく登校したからホッとした。 その日の放課後、みんなで昨日起きた事を話し合うことにした... 砂は楠の樹の上で、自分が見た一部始終を話したけど、 美沙は床下の少年のことはまったく知らなかったそうだ。 缶を蹴られたサダは、前日と同じように黒い影だったというばかりで、 ロクベーは音を聞き、松っちゃんは自分の横を風が吹いたというし、 マコだけは音も何も感じず、ただ缶が凄い勢いで宙に跳んだという。 それからも6人には何事もなく、この出来事はすっかり忘れていたけど、 中学にあがった最初の夏休みに美沙からの電話で全員が呼ばれ、 久し振りに美沙の自宅で6人が集まった。 美沙の家には、美沙の亡くなった父親の弟が帰省して遊びに来ていて、 その叔父さんから昔あった神社での出来事を聞いた。 叔父さんの話しは、戦時中の出来事だった... 昔、鎮守の森は都会から疎開してきた小学生の遊び場だったそうで、 美沙の叔父さんも、よく竹馬やチャンバラ、缶ケリ遊びをしていたらしい。 あるとき、同級生の男の子が遊びの最中に燈籠の下敷きになって、 両脚がぐしゃぐしゃに潰れたそうだ。 足が速さが自慢だった子で、缶ケリが得意で人気者だったらしい。 戦時中のことで、田舎の病院は医者も不足していたし医薬品もろくになかった。 男の子は両脚を切断し、梅雨明けの少し前に亡くなったそうだった。 その後、あそこで子供らが遊ぶと、色々と不思議な事が起こることもあって、 次第に誰も遊ばなくなったという。 話を聞いていて、背恰好も砂が見た男の子に似ている気がした。 だけどあの日、缶を蹴ったのが誰だったかは未だに判らない。 だけど、あの少年は今もあの神社で、かくれんぼの相手を待っているような気がした... お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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