カテゴリ:砂の魂のふるさと
口にした本人がいなくなった今では、嘘なのか本当なのかは判らないけど... 孔雀草(くじゃくそう)は、6月6日に枝を切り戻さないと花が咲かないと、 婆ちゃんは、つぶやきながら、小さな花株を大事に育てていた。 婆ちゃんの家から、5分ほど歩いて大門坂を抜ければ熊野那智大社に至る。 家からも、杉木立の隙間から熊野の神が宿るという那智の大滝が少し見えていた。 そんな懐かしい風景が、今もはっきり記憶に残っている。 近隣の家も、田畑も、土地ごと根こそぎ流されたから、 孔雀草なんか、恐らくもう二度と見ることはないと決めつけていたけど、 どういう訳だか、生き残っっていたようだった。 孔雀草は、まるで婆ちゃんの魂がそこに眠っているとでも伝えたげに、 小石と川砂の中から顔を出して、静かに咲いていた。 地震、津波、風水害、竜巻... わずかな間に幾つもの災害に見舞われ、 日本各地で大勢の人が亡くなった。 亡くした人は二度と還らないけれども、季節が巡れば花はまた咲く。 決して見事とはいえないけど、小さな陽だまりで心地よさそうに咲いていた。 孔雀草は、もう婆ちゃんの手を借りなくてもここに咲き続けるだろう。 きっと、来年も再来年もこの場所で咲いているだろう... がんばれ東北福島県の大和川酒造の日本酒 弥右衛門 純米辛口 720ml お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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