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ないものねだり

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2015.12.19
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カテゴリ:砂の魂のふるさと
DSCN0193.jpg

人は、冬にどんな色を感じ、どんなイメージを持つだろう。
勿論、人によっても、環境によっても大きく異なるだろう。
                         ☆写真はクリックすると拡大
IMG_9565.jpg

都会だと、SALEのポスター、クリスマス・デコレーションや、
街頭の煌めくイルミネーションに冬を思う人もいるだろうし、
歳暮や冬の行楽を思い描くかも知れない。

DSCN0192.jpg

喧騒を離れて自然に近づくと、葉を落とした木々、乾いた土、
鉛色の海、軒下の柿、霜柱や凍てつく小川に冬を見出す。
それも、まだ雪国の人が描くイメージとは違う冬だろう。

かつて、部下や知人には、豪雪地帯出身者が何人かいた。
話を聞くと、雪国の冬の暮らしは長く厳しいという。

DSCN0718.jpg

私が生まれたのは祖父の別宅で、地理的には近畿に位置し、
雪国の人からすれば、暖地と決めてかかるだろう。
だが、実際は少々違うのだ。

祖先の名に由来するその地域は、中世の館址が点在し、
大和の国に近く、集落は深い谷を挟んでいた。

紀州北部の山間部の冬は、意外と厳しいものだった。

DSCN0703.jpg

私が抱く冬のイメージは、囲炉裏のの色だ。
煙をひいて燃える小枝、薪がパチパチ爆ぜながら燃える色。
広い土間から、一段上がった十六畳の板間に囲炉裏があった。
燻された天井の梁には、電燈が一つ吊るされていた。

DSCN3263.jpg

囲炉裏端には、いつもドラマがあった。
出稼ぎの山林労働者たちの身の上話や、年頃の娘たちの恋話、
僧侶や古老には、山河の伝説やあやかしの話を聞いた。

猪や鹿狩りの頃は、近郷の人が集って銃の手入れをしたり、
狩猟のあとの酒盛りで、喧嘩や口論が起きたりもした。

大抵の場合、集落の相談事や諍い事は祖父が収めた。

他にも、川の堤防や橋の架け替え、祭りや寺社の改修の差配など、
祖父は祖先の地に帰る度に、地域の世話をよくした。

DSC_0226.jpg

囲炉裏から漂う、猪鍋やアマゴの焼ける匂いが好きだった。
外は静かに雪が降り、囲炉裏には山桜が咲くまで火があった。
冬は春を待ち、命が眠ることを実感する体験だった。


今でも時々、あの頃の風景が瞼に蘇える。
かつて、人はもっと自然に近く、寄り添って暮らしたのだ。
季節を忘れ、自然を忘れ、縁を忘れて人といえるのだろうか...






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Last updated  2015.12.19 17:22:03
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