話題に上らないことなら聞くな。
息子の友だちが泊りがけで遊びにきた。一人っ子のお母さんは大概そうだと思うが、兄弟がいないと、友だちが来てくれた方がラクである。本人も子供同士が楽しいし、わたしも自由がきく。子供という同じ立場が増えることで、息子の態度もやや大人びて、偉そうになったりはするが。普段なら素直に返事することも、友だちの手前、格好つけてうるさそうにする。あんまり調子に乗るので、お友だちをこっちの味方につけようかと、「○○くんちはお父さんとお母さん、どっちがうるさい?」とふってみた。ちょっと沈黙があったあと、「うーん、わかんない、お父さんいないから」と言う返事を聞いて、一瞬固まってしまった。色々なことに対して固定観念を持たないようにしていたつもりが、やはり両親が揃っていて当たり前、という質問をしている。「お母さん、余計なこと聞かないでよ。可哀相じゃん」と、息子が口を挟む。お父さんいないから可哀相、なんて変じゃん、可哀相なんて思ってほしくないかもよ。もしかしたら大変かも知れないけど、お父さんいないこと自体を特別、可哀相と思うのもどうなの?「あ、そうか、ごめん」ある意味、自分に対してそう言ったのだけど。お友だちは笑ってその会話を聞いていたけれど、そう言えば、お父さんの話はそれまで聞いたことがなかった。自分から色々話さずに聞かれなければ答えないわたしは、聞くということに対して無神経だったかも知れない。話題にならないのは、口にしたくなかったからなのかも。言いたくないことだったのならごめんね。今までもこれからも、何度もこんな場面に遇うかもだけど、きみならきっと、素敵に大きくなっていけると思う。