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テーマ:城跡めぐり(1258)
カテゴリ:城跡と史跡(千葉編)
太平洋を臨む外房の勝浦の、さらに海に突き出した八幡岬に勝浦城があります。
周りは断崖となっていますが、波の洗う海面近くに目を向けると、房総の城郭特有の切岸や船着場のような跡が見られました。 (戦国期のものかどうかはわかりませんが、自然に出来たものではないように思われます) 現在は八幡岬全体が八幡岬公園となっており、かつての曲輪跡と思われる場所も公園広場になっていました。 本丸跡? 本丸の周囲は断崖となっており、風もなく穏やかな天気なのに、はるか足元では太平洋の荒波が打ち寄せていました。 目の前には太平洋が広がるだけの勝浦城、そもそも「ここに城郭を築く意味はあるのだろうか?」と思いがちです。 (海の向こうからやって来る敵と言えばアメリカのペリー艦隊くらいのものですが、それも300年後の話です) それでも里見氏にとって勝浦城は重要拠点として位置づけられており、佐貫城・久留里城・大多喜城・そして勝浦城と、房総半島を横断する防衛ラインで北条氏の侵攻に備えていました。 里見義堯は自ら久留里城を本拠地とし、内房の佐貫城には嫡男里見義弘、大多喜城には重臣中の重臣である正木時茂、そして勝浦城にはこちらも里見氏の重臣である正木時忠(正木時茂の弟)を配していたことから、房総の生命線であったことがうかがわれます。 その対北条氏の防衛ラインの中で、勝浦城は北条氏の小田原城から最も遠い場所にあり、しかも房総半島の東側にあるのですが、里見義堯はここを北条水軍の上陸地点の1つと読んでいたと思われます。 対岸の三浦半島に最も近い内房の造海城や金谷城もさることながら、外房の勝浦城を重視した理由は、黒潮の潮流にあるのではないでしょうか。 ところで黒潮について言えば、千葉の「安房」の地名も徳島の「阿波」に由来するとも言われ、房総半島には勝浦は白浜など、紀伊半島と同じ地名も見られることから、黒潮と房総半島は大いに関連があると思っています。 そもそも里見氏初代の里見義実が流れ着いたのも南房の白浜であり、石橋山で敗れた源頼朝が流れ着いたのも洲崎でした。 黒潮が運んだものは他にもあると思っていて、あくまでも個人的な推測ですが、まずは醤油と、そして鈴木さんだと思っています。 醤油については銚子のヒゲタ醤油や野田のキッコーマンなど、千葉県の房総半島北部が有名ですが、元々は紀伊半島和歌山の湯浅が発祥です。 ちなみに現在の大豆を発酵させて造る醤油の歴史は浅く、室町時代後期のちょうど戦国時代の頃に湯浅の「径山寺味噌」の溜まりが広がったものとされています。 醤油の名産地としては銚子・野田の他に小豆島や竜野(兵庫)が代表的ですが、小豆島や竜野が同じ瀬戸内海にあって湯浅から距離も近いのに対し、銚子や野田については黒潮に乗る以外に考えられないところです。 黒潮に乗ってきたもう1つが「鈴木さん」だと思っていて、全国に2番目に多い名字ながら、三重県以東の太平洋側に集中しています。 鈴木さんの発祥は紀伊半島の熊野神社に由来していると聞いたことがありますが、その鈴木さんが黒潮に乗って移って来たとすれば、三重県以東の太平洋側に多い理由も納得するように思います。 (あくまでも個人的な推測です) 話は戻って勝浦城ですが、元々は真里谷武田氏時代の大多喜城の支城として築城されましたが、里見氏の上総進出によって勝浦城も里見氏の支配下となりました。 1541年頃に正木時忠が入城し、大多喜城の兄の正木時茂と共に、房総防衛の一翼をになっていました。 房総の重要拠点であった勝浦城でしたが、第二次国府台合戦で里見義弘が北条氏康に敗れると、正木時忠が北条氏に寝返える結果となり、勝浦城も北条氏の支配下となりました。 里見義堯と里見義弘にとって、この正木時忠の寝返りは相当な打撃であったと思われます。 1590年の豊臣秀吉による小田原攻めの時は、徳川軍の本多忠勝(後に上総大多喜初代藩主)によって攻囲され、勝浦城も落城しました。 周りを海で囲まれた勝浦城にあって、逃げる先は断崖の先にある太平洋しかないのですが、その太平洋へ逃れたのが、時の城主正木頼忠の娘の於萬の方でした。 海へ逃げるにしても周りは断崖で囲まれているため、於満の方は白布を結んで断崖に垂らし、海の小船で逃れたと言われています。 その後の於萬の方ですが、伊豆に逃れた後で徳川家康の目に止まり、側室となって徳川頼宣(初代紀伊藩主)と徳川頼房(初代水戸藩主)の母となっています。 徳川御三家のうち二人の藩祖が同じ於萬の方を母としており、そのルーツは勝浦城にありました。 あの黄門様の徳川光圀も暴れん坊将軍の徳川吉宗も、そのルーツの一端にあったのが勝浦城です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018/01/19 10:33:17 PM
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