ムーティー指揮のスカラ座DVDとまったく違う!
「表情豊かにゆったりとしたメロディーを調和の取れたフレージング歌唱することで、フランス語やこのオペラのトランジェディ・リリック(叙情悲劇)という特徴が引き立つ」という、パンフ記載のゼッダのメッセージどおりの、感性に基づいたギョーム・テル堪能です。
序曲から、単独演奏されるときとまったく違いました。
勇猛さより、もっと上品な感じ、序曲で「終わったぁ」という感じにならず、まさにこれから始まるオペラの雰囲気を伝える¨序曲¨です。
こんな演奏初めてですが、これから何が起こるのだろうというワクワク感を与えてくれます!
再び、マリーナ・レベカのロッシーニが聞ける!と期待したのですが、なんと肺炎で降板!
でもイアーノ・タマーはマエストロの意向を汲んで叙情豊かにマティルドを表現していきます。
3幕のアルノールとの二重唱にふんだんにあるアジリタもこなしながらの表現はすばらしいです。
そしてアルノールのシー・イージェは、ハイCだらけのこの役に、いわゆるヒーロー的な圧倒感ではなく、血脈入った表現をしてました。だからこそ伝わるヒーローの悲哀やうれしさの感情。わたしは、4幕の有名なアリアは初めて生で全部聞いたのですが、自分が思い描いていた(トロヴァトールのマンリーコ的な)イメージとまったく違う歌唱なのに、伝わる情感に感動しました。
ギョーム・テルの牧野さんも、こういった流れどおりのバスで、3幕のアリアは感動しました。
ヒーローやヒロイン的な歌声はなく、みんな柔らかく歌って、叙情豊かかつ、ヴェルディのときのような感情がビンビン伝わってきました。
フランス語オペラにまたまた目から鱗です。
それにしても、80すぎてるとは思えない、マエストロ・ゼッダかくしゃくとした動きはすばらしいです!そして御大の慧眼にまたまた大感激でした。
東京フィルハーモニー交響楽団 第782回定期演奏会
ロッシーニ:歌劇『ギョーム・テル(ウィリアム・テル)』ハイライト
指揮:アルベルト・ゼッダ
マティルド ソプラノ:イアーノ・タマー
アルノール テノール:シー・イージェ
ギョーム・テル バス:牧野正人
合唱:新国立劇場合唱団
平成22年3月7日 Bunkamuraオーチャードホールにて