私なりのかなり勝手な解釈と感想。
グン=ブリット・バークミンのサロメは、狂気の表情を浮かべるが、最後は「少女」でした。
少女だからこその、思い込みの狂気。まさに現代社会に通じるサロメです。
10代で妖艶というよりも私には受け入れやすかった。
登場早々、ナラボートにヨカナーンのことを聞き、一途に思い込んでしまうのが、まさに少女。
サロメにとってヨカナーンは韓流スターやジャニーズの度合いなのです。
ふだん周りにいない異質なものだから入れ込んでしまった。
わたしはサロメにはこれまで、興味を持った男は全員自分に興味を持たせたいタイプとイメージしていました。
井戸から出た「大人」のヨカナーンは、なんだこのわけわかんない小娘、という理由で相手にしないのでは?
世間知らずでわがままな「少女」だからこそ、目の前の「アイドル」ヨカナーンへの思い入れインパクトが半端じゃない。
ヘロデ王とヘロディアスが登場するまでのサロメのハイテンションすごかったです。
ナラボートを嫉妬で自殺させてしまうのも、妖女にまどわされたというより、見切り付けたという感じ。
ヘロデ王とヘロディアスが、キャラ設定ぴったりでした。
ヘロデ王のルドルフ・シャシンクは、シャイー指揮リゴレット画像のパヴァロッティに似た、いかにも好色そうな王様。
ヘロディアスは、イメージ的には「奥さまは魔女」のエンドラ役のアグネス・ムーアヘッドっぽい、きつく怖そうな感じ。
二人とも最後、ヨカナーンの首に愛おしく絡みつくサロメに完全に引いちゃってます。
バークミンは後半のほうは抑えた感じでしたが、だからこそ、普通の少女がはまりこんでしまった狂気を感じます
サロメは、ヨカナーンを手に入れた夢見心地のままヘロデ王の命令で殺されてしまいましたが、あれだけ好き放題したのだから当然というのではなく、このままたぶん少女から成長しないであろうサロメにとっては、幸福だったんじゃないのか?これでよかったんだと妙に納得してしまいました。
妖女ではなく、純真ゆえ思いこんでしまう少女だったんだと感じたサロメでした。
バークミン出ずっぱりおみごとです。
シュナイダーは非常にバランスよく、結局2時間近くのめりこませていただきました、すばらしいです。
指揮:ペーター・シュナイダー
演出 :ボレスラフ・バルロク
美術:ユルゲン・ローゼ
ヘロデ:ルドルフ・シャシンク
ヘロディアス:イリス・フェルミリオン
サロメ:グン=ブリット・バークミン
ヨカナーン:マルクス・マルカルト
ナラボート:ヘルベルト・リッペルト
小姓:ウルリケ・ヘルツェル
第1のユダヤ人:ヘルヴィッヒ・ペコラーロ
第2のユダヤ人:ペーター・イェロシッツ
第3のユダヤ人:カルロス・オスナ
第4のユダヤ人:ウォルフラム・イゴール・デルントル
第5のユダヤ人:アンドレアス・ヘール
第1のナザレ人:アルマス・スヴィルパ
第2のナザレ人:ミハイル・ドゴターリ
第1の兵士:アレクサンドル・モイシュク
第2の兵士:ダン・ポール・ドゥミトレスク
カッパドキア人:ヒロ・イジチ
奴隷:ゲルハルト・ライテラー
ウィーン国立歌劇場管弦楽団
2012(平成24)年10月14日 東京文化会館大ホール