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カテゴリ:今日読んだ本
あの<降臨の野>での奇跡から11年後--。ある闘蛇村で突然<牙>の大量死が起こる。大公にその原因を探るよう命じられたエリンは、<牙>の死の真相を探るうちに、歴史の闇に埋もれていた、驚くべき事実に行きあたる。最古の闘蛇村に連綿と伝えられてきた、遠き民の血筋。王祖ジェと闘蛇との思いがけぬつながり。そして、母ソヨンの死に秘められていた思い。みずからも母となったエリンは、すべてを知ったとき、母とは別の道を歩みはじめる......。(講談社BOOK倶楽部より引用) 1・2巻で完結と思われた獣の奏者の続編が出版されました。 まず3巻では1・2巻で謎のまま終わっていたことが次々と解き明かされる面白さがありました。おお~なる程とぐいぐい引き込まれていくのですが、いつの間にか急流の只中に取り残されたような、エリン個人の思いだけでは流れを押しとどめることは出来ないような恐ろしさを感じることになってしまいました。 振り返れば、ただ王獣と一心に心を通じさせたことが、一体何故こんな重く苦しい運命へと導かれることになってしまうのでしょうか。 そんなエリンの思いを誰が攻められるでしょう。ゆがんだ成熟を強いられる王獣や闘蛇を哀れに思い、解き放ちたいと思うがゆえの彼女の行動を。。。 何となく、読む前からこういう結末の予感はあったのですが、やはり直面すると打ちのめされました。可愛くて哀れな王獣たちのあまりにも壮絶な姿。エリン親子の絆の深さ。ただただ胸が痛く、涙が溢れました。 しかし、そんな悲しみの中にも彼女の成した事により、王獣が解放されたこと、そして再び断絶されていた知識の扉を開いたことが何より素晴らしい終幕でした。 翻って現代に生きる我々も、あまりにも身の丈に合わない力を弄んではいないか等と考えさせられる作品でもありました。
上橋作品には、本当に毎回驚かされてばかりです。作られた世界の物語でありながら嘘やごまかしの無い、ある意味非情なまでのリアリズムが注意深く物語全体に流れていることが、登場人物の心情をありありと浮き彫りにするのでしょう。 そして何といっても見事なまでに破綻の無い完結の仕方に息を呑むのです。
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