ナチズムの本質は、組織共有者のへりくだる三つ目である。
　ハイデガー先生も例外ではない。
　本物の哲学者なのだが、積極的キリスト教の信者でもある。

　哲学は、享有においてヘリ下る、そのことで達成される。
　へりくだって無知の知を悟ることができる。
　古代ヘラスでは、エポケーと言われていた、時空の反省だ。
　時空がなければニヒリスムスに落ちる。
　ヘラスの彼らは、神々の前にへりくだった。
　つまり三つ目の前にへりくだったのではない、のである。

　西洋の、そして現代東洋の一神論者たちは違う。
　彼らは唯一絶対の権威の前に、へりくだる。
　享有を反省する。
　しかし共有を反省は、しないのだ。
　組織を反省できない。

　聖アウグスチヌスは、この組織を反省できない自らを自覚し、組織を作った。
　つまり修行の場にしたわけだ。
　ナチスのハイデガー先生は、積極的キリスト教の前に、佇んだのである。
　だから、哲学の終焉を告げねばならなくなった。
　三つ目の前に。

　しかし救済は、あるのだ。
　素朴な思惟では、存在は多様に生起する。
　そのことを先生は認めている。
　絶対の権限者の前にへりくだっているわけではなく。
　人が生きている、時間・空間の感性、感覚があることの意味を反省しようとしているのだ。

　同じ感性に意味を見出したとしても、シェリングはダメだ。
　オイラ、彼については無知だが、知的直観重視の人。
　積極的キリスト教やルター神学に近いんじゃあるまいか。

　三つ目に囚われると、享有する感性は、この知的直観の前に奴隷となる。
　つまり共有のモノとして立てたはずの時間・空間のゆらぎを失ってしまう。
　共有へへの反省がなくなり、自分の享有すら見えなくなる。
　立てた美的直観の奴隷と化すのだ。

　ここに積極的キリスト教の、怖い部分がある。
　ナチスの信奉していたキリスト教だ。
　もっと正確に言うなら。
　キリスト教という一神教を積極的に徹底させた、その怖い部分だ。
　神の権威と一体化してしまって、ヘリ下りがへりくだりでなくなってしまう。
　普遍宗教たろうとするカトリックですら、この傾向が見られるるのだ。

　カトリックの場合は、個人享有のへりくだりは本物なのだが。
　つまり原罪を（現在を）認めるので。
　共有組織へのへりくだりが、教会組織への修行を通じてのへりくだりでなく。
　神の権威にへりくだってしまう。
　人の罪ではなく、神の権威にへりくだってしまう。
　共有組織者の、三つ目権威を認めてしまうのだ。

　例外的単独者として宗教的権威を批判し、セーヤン・キアケゴードがこれを批判していた。
　彼の論議は脱存論のモトとなった。
　但し享有の神は、彼を無慈悲に破滅させたではないか。
　神を三つ目にしたら、そうなるのである。
　あれらは三つ目ではなく、みつめ（られ）というもの。
　享有し、共有する、オイラたちの現実だからだ。

　ナチズムや超越論の背後にいる、絶対の権威や力ではない。
　オイラたちの小さな生が寄り集まって息づいている現実なのである。
　共有現実をコックリさんにしたら、怖いことになるに決まっている。

　それを忘れて、ナチズムの優生学に加担してはいけない。
　医学界や、特にその防疫関係者がこれに囚われ、科学技術と一体化して。
　今やナチス全盛の時代となってしまった。

　原因は、三つ目権威の前の、哲学の死である。